ミンチェンさんの家族は警察官から「葬式代だ。他言はするな」と言われ1000元(約15000円)を渡されたという。こうしてウェンジィさんの死はうやむやにされたまま、警察は未解決事件として捜査を打ち切った。
ウェンジィさんの死によって稼ぎ手を失った一家の貧窮は、想像を絶した。姉は既婚で家庭があり、頼りにならない。母は生活するために果物を売ったが、父のように安定した収入を得ることはできなかった。また10代の兄も売り子として外に出たが、一日に7~8元(約107~123円)を稼ぐのがやっとだった。ミンチェンさんは学校の成績は優秀だったが、街に出て麺を売るようになり、ついには小学校を退学した。こうしてミンチェンさんの中で「父を殺し、家族を陥れた男を捜し出し、法の下で裁いてやる」という強い決意が生まれていった。
ミンチェンさんが10歳になると、一家は雲隠れしたモキを捜すために住み慣れた町から都心へと引っ越した。ミンチェンさんは食べていくために売り子をする傍ら、モキの写真を片手に情報集めに奔走した。
2007年には雲南省昆明市の鉄道駅で、2013年には福建省晋江市で「モキを見かけた」という情報が届いたが、本人は見つからなかった。しかし父殺害から17年を経た2017年のこと、「モキは福建省南安市の食器工場で働いている」という有力な情報が寄せられ、ミンチェンさんは車を借りて再び2000キロ以上離れた福建省へと向かった。4年前の福建省での捜索では6か月を費やしたが、この時は工場のそばで3日張り込みをし、ついにモキを見つけ出した。
ミンチェンさんはその後、父が最期に着ていた衣類など証拠品をもって警察に情報を提供し、殺害から17年と4日後にモキは逮捕された。モキは名前を変えて暮らしており結婚して子供もいたというが、ミンチェンさんもすでに26歳になっていた。
なお2018年10月10日、モキは昭通市の中級人民法院にて終身刑を言い渡されている。しかしながらミンチェンさんは「鎮雄県の警察はモキが実家に15年も戻ってきていないことから、モキの存在自体を抹消していた。警察の初動の遅れやその後の対応については納得しているわけではない」と語り、こう続けた。
「父は短時間で首、心臓、ふくらはぎ、腹、手などを18か所も刺されている。モキ1人が父を刺したとは思っていない。また家族はモキの逃亡を助けていたはずだ。17年という長い時間を取り戻すのは難しいことだよ。」
ちなみにミンチェンさんは3年前、地元メディアのインタビューにこんなふうに語っていた。
「これまではお金も時間もなく、自分の幸せについては考えたこともなかった。でもそろそろ彼女との結婚について真剣に考えようと思っているよ。」
ミンチェンさんがその後、結婚したかどうかについては明らかにされていないが、どうか幸せであって欲しいと願うばかりだ。
画像は『万维读者网 2020年9月17日付「9岁目睹父亲被杀,他辍学追凶17年」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)