そのままニューハンプシャー州のコンコード病院に搬送されると、胸にチューブを挿入し、肺から漏れ出した空気を脱気する胸腔ドレナージの治療を受けた。
ところがショーンさんのケースは重症で2日経っても穴は塞がらず、医師は穴が開いた部位を手術によって切除せざるを得なかった。そうしてショーンさんは、医師が胸腔カメラで映し出した手術前の自身の肺の映像を見せられ、言葉を失った。
ピンク色の肺の表面にはカビでも生えたかのような黒い点があり、医師には「肺がベイプで損傷を受けてしまった。これは肺に炭粉沈着が起きたもの」と言われたという。
ちなみにショーンさんは当時、ジムで週に7回は身体を鍛え、総合格闘技(MMA)の練習もこなしており、自分の健康を過信していたそうで、「その映像を見た時は本当にショックで、悲しかった。健康な肺を自分で傷つけてしまったのだからね。ベイプなんて始めるんじゃなかったよ」と語ると、このように続けた。
「僕は自分の心肺機能は誰よりも高いと思っていた。だから以前、ベイプを吸って気胸になったという男性の動画をTikTokで見ていて『身体を鍛えている自分にはそんなことは絶対起こらない』と思っていたんだ。自分はあんなヤワじゃないとね。でも自分が気胸になって初めて、ベイプのリスクについて考えるようになったよ。」
幸いにもショーンさんは、先月27日に退院し、医師には「完全な回復が見込まれる」と言われたそうだ。ただ普通の生活をするには1か月が必要で、現在は9キロ(20ポンド)以上の物を持ち上げることはできず、情熱をかけているMMAの練習も先送りしている。また仕事も休んでいて、「もう二度とタバコもベイプもやらないよ」と述べている。
なお米オハイオ州にあるクリーブランド・クリニックのウェブサイトでは、電子タバコ、電子フーカー、電子葉巻、ペン型ベイプなどを「電子ニコチン送達システム(ENDS : Electronic Nicotine Delivery Systems)」と呼んでいる。ENDSは当初、タバコより安全と言われていたものの、脳への影響や中毒性、リキッド内にニコチンや香料だけでなく身体に有害な化学物質が含まれていることが指摘されており、「長期にわたる身体への影響は分からない」と記している。
画像は『New York Post 2023年8月14日付「I’m an MMA fighter who lost part of my lung ― I did it to myself by vaping」(Kennedy News & Media)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)