去る6月24日、ポーランドで行われたヨーロッパ陸上チーム選手権大会のハードル走にて、他の選手に大きく後れを取って最下位でゴールした女性選手がいた。実は本来、彼女の出場競技は別種目であり、ハードル走に関しては「門外漢」であった。実際のレースの様子を捉えた動画には、明らかに他のハードル走選手とは異なる走り方、ハードルの越え方をする一人の女性選手の姿が映っている。それでも必死に走り切り、笑顔でゴールしたこの選手に対し、他の選手や観客から称賛の拍手が送られた。一体なぜこのような事態が発生したのか。また最下位になるであろうことはおそらく承知の上で、専門外のハードル走に出場したこの女性選手の思いとは? 米ニュースメディア『CNN』などが伝えている。
6月20日から25日にポーランド南部シロンスク県ホジュフにある競技場「Slaski Stadium」で開催された「ヨーロッパ陸上チーム選手権大会(2023 European Athletics Team Championships)」にて、100メートルハードル走での出来事が大きな話題を呼んでいる。
同競技に出場予定だったベルギー代表のアンヌ・ザグル選手(Anne Zagré)が、負傷のため棄権せざるを得なくなってしまった。ヨーロッパ陸上チーム選手権大会は国対抗の大会であるため、アンヌ選手以外にも失格の選手が出るなど不運が重なっていたベルギーチームは、得点の関係でこれ以上の欠場者を出すわけにはいかない状況に追い詰められていた。
「誰でもいいから出場しなければ」という状況で声を掛けられたのは、ベルギー代表の砲丸投げ選手として今大会に参加していたジョリーン・ボムクウォ選手(Jolien Boumkwo、29)だった。前日に出場した砲丸投げで16人中7位で競技を終えたジョリーン選手は「チーム(の勝利)は私にとって一番大切なことです。たった1点の差で負けるわけにはいきません」と、