こう続けた。
「クマシと仲間たちは、死んだ赤ちゃんに顔や目を近づけて視線を合わせようとしていた。こうすることで、サルや猿人類は死んだ仲間の目の動きを観察している可能性があり、目と目が合わなければ『何かがおかしい』という合図と考えるのだろう。」
こうしてクマシは次第に落ち着かなくなり、死骸を引きずったり、投げ飛ばしたりする様子が見られるようになった。そして9月3日、ついに死骸をむさぼり始め、そのほとんどを自分だけで食べてしまった。残っていたのは頭蓋骨、脚、尻尾の一部で、翌4日、いたたまれなくなった飼育員はサルの囲いから死骸を取り出したという。
なおこの研究論文の共著者で、イタリアのピサ大学で霊長類学を研究する生物学者であるエリザベッタ・パラギさん(Elisabetta Palagi)は「人間は共食いを恐ろしい行為と捉えがちだが、クマシが死んだ息子をむさぼり食ったのには正当な理由がある」と推測し、次のように述べている。
「母親は共食いをすることで、妊娠中に失った体力を回復させ、将来の生殖が成功するチャンスが増える。母親が他の仲間と死骸をシェアしなかったことは、共食いで栄養的な恩恵を受けているという仮説を裏付けるものである。」
さらに研究では、「赤ちゃんがまだ生後間もなく、双方の愛着が形成されなかったことも共食いに走った原因のひとつだろう」と指摘し、「動物園で飼育されていたことが共食いにつながったとは考えにくい」と続けた。
画像は『Safari Park Dvůr Králové 2020年4月21日付Instagram「Přesně minulý týden se u drilů černolících narodil nový člen.」』『Live Science 2023年7月3日付「Zoo monkey eats her baby’s corpse after carrying it around for days」(Image credit: Primates/Casetta et al. 2023)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)