「絶対に私はそんな罪を犯していない。何かの間違いです。どうか再調査を。」 17年間という長い服役生活を送る中、幾度も不服申し立てを行っていた米ミズーリ州の男性。このほど彼の冤罪が判明した。愛する家族のもとにやっと戻れた男性はその後、明らかになった真犯人の顔を見て妙に納得したそうだ。“ドッペルゲンガー”により人生を狂わされた気の毒な男性の話題を『Washington Post』ほかが伝えている。
カンザス州カンザスシティのウォルマート駐車場で1999年5月31日、黒っぽい肌の色の男がタマラ・シェアラーさんという女性から財布を奪おうとして失敗し、携帯電話を奪って逃走するという事件が発生した。この事件の容疑者として数か月後に逮捕されたのは、ミズーリ州カンザスシティのリチャード・ジョーンズさん(現在41歳 写真・左)。被害者は犯人の顔をよく見ておらず、DNAや指紋といった証拠もなし。目撃者が見たという犯人の左腕のタトゥーについてもシロ。さらにリチャードさんにはその日、自宅でパーティーを開催という立派なアリバイがあった。だが目撃者が面通しで「この男に間違いない」と強調したことから、リチャードさんには懲役19年の実刑判決が下ってしまったという。
そこでリチャードさんは、濡れ衣を着せられ有罪判決を受けた人々について真実を調査し、正しい法の手続きや訴訟を求めるNPO法人の「Midwest Innocence Project」と「Project for Innocence at the University of Kansas School of Law」に救済を求めた。再調査と裁判所への陳情を辛抱強く続けた彼らの執念も実り、このほどやっとリチャードさんの冤罪が確定。彼は晴れてカンザス州の刑務所を後にした。事件当時に犯行現場の近くに暮らし、仲間とともに不法薬物を使用していたリッキー・アモス(写真・右)という男が真犯人と判明したが、この事件での追訴はないもよう。ほかにも罪を犯して1990年代から服役中であったのだ。
その後、リチャードさんとアモスは少しの期間だがカンザス州内の同じ矯正施設にいたこともわかった。リチャードさんは「そういえば、ほかの受刑者から『ここにはお前とそっくりな男がいる』とよく言われたね。それに僕を訪ねてきた弁護士のアリス・クレイグさんからも、『さっきカフェテリアにいたでしょう? 私に気づいたのに挨拶してくれないなんて』と言われたことがあった」と語っている。