NYUで顔の一部と左の眼球の同時移植手術を受けた。手術はロドリゲス医師をはじめとする総勢140人がチームとなり21時間を要したそうで、世界初の眼球移植の手術では、視神経の再生を促すためにドナーの骨髄から採取した幹細胞が使用された。
そうして手術から37日後に退院したアーロンさんは、約6か月が経った現在、固形食を摂り、味や匂いも分かるようになったという。まだ上手く話すことはできないものの、手術によって明らかに生活の質が向上したようで、次のように語っている。
「事故後はのどに管を入れて呼吸をし、半液体状(ピューレ)の食事をストローで摂る生活をしていたからね。こんなに回復するなんて思ってもいなかった。ヒゲも生え、鏡に映る自分を見ると『本当に手術をしたのか』と思うこともある。本当に衝撃的だよ。」
一方で左目はというと、まだ視力はないが、目に映し出された画像を脳に運ぶ役割を担う網膜への正常な血流が確認できているという。
ロドリゲス医師は「眼球移植は患者の命を奪う可能性もあった。でも彼は唯一、『以前のようにヒゲが生えるようにして欲しい』と言ってきただけで、手術を強く希望した。家族が彼を支え、顔面移植の候補者としては完璧だった」と明かし、こう述べた。
「彼の脳は眼球からのメッセージを受け取っている。眼球は生きている。まだ視力はないものの、私は楽観主義者でね。今言えることは、次のステップに一歩近づいたということだ。」
一方、アーロンさんは「事故は本当につらかった。私はこの事故で身体的な強さだけでなく、意志の強さも試され、打ち勝ったと思っている」と語ると、力強くこのように続けた。
「最もつらい時、私に第2の人生を与えてくれたドナーや家族には感謝してもしきれない。ただ家族に対しては、ドナーの一部が私の中で生きていることが慰めになってくれることを望んでいる。」
ちなみにドナーは30代で、アーロンさんのほかにも3人に腎臓、肝臓、すい臓を提供したという。
アーロンさんはさらに、ロドリゲス医師やチームのサポートにも感謝し、最後にこのように語った。
「もし視力が戻らなくても、自分のケースから学び、次のステップの足掛かりになればいい。そして顔や目に重度の怪我をした人たちを自分がインスパイアできれば嬉しいね。」
なおテックインサイト編集部ではNYUに、今回の手術が多くの人に希望をもたらす大きな一歩になったことを伝え、今後の益々の活躍を祈るメッセージを送っている。
画像は『New York Post 2023年11月9日付「First face-and-eye combo transplant makes history at NYU Langone: ‘Grateful beyond words’」』『NYU Langone Health 2023年11月10日付Facebook「Aaron James, who survived a 7,200-volt electric shock」』『The Sun 2023年11月9日付「MEDICAL MIRACLE Man burned from the inside out in 7,200-volt electrocution gets world’s first eye transplant」(Credit: AP)』『Shake My Beauty 2022年10月26日付Instagram「On a typical night after work,」』『Mitch Hunter 2017年12月2日付Instagram「There’s way to many self proclaimed badasses out there.」』『7NEWS.com.au 2021年2月28日付「Domestic abuse survivor becomes 1st person ever to undergo second face transplant」(Credit: NBC)』『FOX 8 News 2020年7月30日付「Connie Culp, woman who underwent first face transplant surgery in US at Cleveland Clinic, has died」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)