これを聞いた看護師は脳卒中を起こしている可能性が高いと判断し、優先的に診察・検査を受けられるように取り計らった。そして20分後にジョエルさんはCT検査を受けると集中治療室に運ばれ、さらにMRI検査を受けることになった。これらの検査の結果、ジョエルさんは頚動脈解離を起こし、それが引き金となって脳卒中を起こしていることが判明した。35歳とまだ若く、習慣的にスポーツを行い健康的な生活を送ってきたジョエルさんにとって衝撃的な事実だった。
脳卒中を起こした場所が運動機能をつかさどる小脳の下部だったため、4児の父親でもあるジョエルさんは「二度と歩けなくなってしまうか、体に障害が残ってしまうかもしれない」と強い不安に襲われた。そんなジョエルさんに担当看護師は自力でトイレに行くように指示しており、できるだけ体を動かすように促したことが幸いしたのか、ジョエルさんは運動機能に障害を残すことなく退院することができた。
「歩き始めた時はクラクラとしましたが、2日間もベッドで寝ていたのだから当然ですよね。体を動かすまでは本当に障害が残っていないか分からなかったので、歩くことができた瞬間は本当に嬉しかったです。起き上がって歩いてバランスを取ることができ、今までと同じ生活を送ることができると実感できたのは特別な瞬間でしたよ」と奇跡的な回復にジョエルさん自身も驚くほどだった。
素早く振り向くという何気ない日常の行動がどのように脳卒中を起こしたのか、その詳しい原因は明らかになっていない。急に振り向いたりするのは日常茶飯事であると話すジョエルさんだったが、この悲劇が起こる1週間ほど前に「首の神経が圧迫されたようなしびれや痛みを感じたが、その後すぐに治まった」と小さな異変があったことを打ち明けている。
ジョエルさんは「もしあの時に看護師が私の症状を重く考えずにいたら、そして他の患者と同じように診察を待っていたら、バランス機能など何らかの障害を抱えていたことは間違いないですよ。もしかしたら命はなかったかもしれません」と対応してくれた看護師に感謝しており、「脳卒中は発症してから3時間以内に治療を受けることが推奨されていますが、早ければ早いほど良いのです。もし診てもらった方がいいかもしれないと感じたら、その直感を信じてください。深刻ではない場合もあるかもしれませんが、もし深刻なケースだったらどうしますか?」とコメントし、すぐに医療機関を受診することの大切さを訴えている。
ちなみに昨年6月には、首の痛みでカイロプラクティックの施術を受けた女性が脳梗塞を起こし、体が麻痺してしまうという痛ましい事故が起きていた。
画像は『New York Post 2023年1月11日付「I almost died after turning my head too fast playing pickleball」(Kennedy News and Media)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 iruy)