鳥類の専門家によるカラスの行動調査を行ったうえでサービスエリアの鳥類への影響を最小限に抑えたいと述べ、キャンベラ郊外ハリソンでの配達を一時停止すると発表した。
ベンさんは「カラスはこの地域環境における重要な存在なので、傷つけたくはありません」と話し、同社の決断に賛同している。続けて「先日、カラスがゴミ収集車を襲っているのを見ました。人を襲っているのを見たことはないので良かったのですが、今のところカラスたちの縄張り意識はとても強いです。賢い鳥であるカラスたちにとって、ドローンはどんな風に見えるんでしょうね? 私たちからすると、庭に空飛ぶ円盤が着陸するような感じでしょうか」とコメントした。
鳥類学者であるニール・エルメスさん(Neil Hermes)によると、カラスは巣に近づく者は何であろうと攻撃対象とみなすそうで犬などを攻撃することもある。しかしドローンを襲うというのは過去に事例が無いという。
ニールさんは「カラスはドローンを攻撃しても無傷なようですし、現在はドローンが飛んでいないことから、カラスたちはドローンを追い払うことに成功したと考えていると思います」と見解を述べた。
なおこのドローンによるデリバリーサービスだが一部の地域では反対の声もあり、キャンベラ郊外ボニーソンという地域では反対活動を行う団体「Bonython Against Drones」が立ち上がっている。
同団体の発起人であるネヴ・シーザーさん(Nev Sheather)の調査によると、キャンベラ南部の住人約80%がWing社製のドローンに反対していたという。住民たちからは「ドローンのせいで犬が暴れる」、「低空飛行するドローンの音を子どもたちが怖がるので、庭で遊べない」などの声があがったそうだ。
またドローンに搭載されたカメラによるプライバシーの問題や、今回のように野生動物への影響も懸念されており、鳥が地域から姿を消してしまったという報告も届いている。
Wing社はドローン活用について、野生動物や環境への影響を検証し報告書を作成したという。しかし海外で行われた調査のデータを参考にしただけのものであり、実際に稼働させる地域での現地調査は行われていなかった。
ネヴさんは報告書についてこのように話している。
「私たちの地域で稼働しているドローンとは、全く関係のないものでした。ACT(オーストラリア首都特別地域)の自治体に担当者がいると思っていたのですが、そんな人はいないことも分かりました。」
「自治体からは、私たちからのフィードバックはWing社に送ってくれと言われたのです。もはや責任転嫁ゲームの状態ですよ。」
画像は『ABC News 2021年9月22日付「‘Territorial’ ravens disrupt surge in Wing drone deliveries under Canberra’s lockdown」(Flickr/Gouldsta and Wing)(Supplied: Wing)』『People.com 2021年9月28日付「‘Territorial’ Raven’s Attack on Delivery Drone Caught on Camera in Australia」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 iruy)