おおたわ史絵氏が、3年前に亡くなった母親についてテレビ番組で語ったのは昨年8月のことだ。東京の下町で診療所を開いていた医師の父と元看護師で専業主婦の母の間に生まれた彼女の家には家政婦がいたというから、一見すると何不自由なく育った裕福な家庭のひとり娘に思える。しかしおおたわ氏の母親は幼児期に患った虫垂炎の処置の遅れが原因で、大人になってからも慢性的な腹痛に悩まされ続け、娘を出産後には寝たり起きたりの日々を送るようになった。やがて彼女は痛みを和らげるため診療所から勝手に鎮痛剤を持ち出し、自分で打つようになる。鎮痛剤の長期使用は母親の性格を変え、やがて幻聴が現れて口撃の矛先は身近にいる幼い娘に向かった。日常的におおたわ氏を罵り、やがて彼女に暴力まで振るうようになったという。
物心ついたころから母親が薬物依存症だったおおたわ氏は、11月29日のブログ『ただいまネイチャー中』に「亡くなるまで闘いは続きました」と明かし、依存症そのものは「ずっと永遠に死ぬまで続く闘い」と記している。それは前日に覚せい剤取締法違反(使用)の疑いで逮捕された歌手のASKA容疑者に関するニュースで、「治療しても治らないの?」「なんでやめられないの?」「入院しても薬は抜けないの?」といった依存症に対する理解が得られない現実を憂いての更新であった。
まず依存には、「やめた」という過去形は無く「やめ続けている」という状態が正しいとのこと。おおたわ氏も何とか母親が平穏な日々を過ごせるよう、考えられる限りの場所に助けを求めて足を運んだという。今回、ASKA容疑者のニュースで伝えられている千葉の病院や群馬の病院、更生施設も全てどこの事だかすぐにわかるそうだ。だが母親がこの世を去るまで、おおたわ氏の辛い日々が終わることはなかった。
ブログには依存症患者を抱える家族に向けて、「どうか日々のトラブルに心を揺さぶられませんよう」と彼女のメッセージがある。両親を看取り全ての呪縛から解放されたおおたわ氏は今、心穏やかな日々を過ごしている。
(TechinsightJapan編集部 みやび)