ミシガン州プレスクアイル郡出身のノルマ・バウアシュミットさん(Norma Bauerschmidt、90)は2015年7月、医師からステージ4の子宮がんであることを告げられた。2日前に夫のレオさんを亡くしたばかりだった。
ノルマさんの息子ティムさんの妻ラミー・リドルさんは当時をこう振り返る。
「ティムも私も退職していたため、その頃私たちはキャンピングカーでアメリカを移動しながら暮らしてきました。義父が亡くなってすぐ末期がんの告知を受けた義母ですが、もう年が年だからと手術、放射線治療、抗がん剤治療は望んでいませんでした。」
「ケアハウスへの入居は義母も私たち夫婦も避けたかったため、義母にこう尋ねたのです。“私たちと一緒にアメリカを旅しませんか”ってね。」
ノルマさんは1分半ほど考えた後「そうね。冒険の準備ができたわ」と目を輝かせて答えたという。
早速車椅子を購入した3人は、1年間で13,000マイル(約20,900キロ)、32州、75か所をキャンピングカーで駆け抜けた。もちろん愛犬も一緒だ。ノルマさんの旅の様子は昨年8月24日から「ドライビング・ミス・ノルマ(Driving Miss Norma)」としてFacebookにアップされたが、アメリカの国立公園や観光地で人生の最期を生き生きと過ごすノルマさんの姿に魅了されたフォロワーは44万人を超えた。
ノルマさんはバケットリスト(死ぬまでにやりたいこと)を作り、3人は旅の中でそれをひとつひとつこなしていったという。
「聖パトリックのパレードに参加すること。VIPゲストとしてNBAプロバスケットボールリーグを見ること。ロブスターとキーライムパイを食べること。熱気球に乗ること。シャチを見ること。」
小さな夢をひとつひとつ叶えていったノルマさんの表情は、実に明るく楽しそうだ。
そんなノルマさんの容態が悪化したのは今年8月末。家族はワシントン州のサンフアン島にキャンピングカーを駐車し、終末期ケアを行うホスピスチームを迎えてノルマさんの最期に備えることにした。そして先月30日、ノルマさんはキャンピングカーで息子夫婦に見守られながら静かに息を引き取った。91歳だった。
最期まで人生を楽しんで生きたノルマさん。彼女の死を知ったフォロワーの言葉はとても温かい。「Facebookをずっと見てきました。ノルマさんが逝ってしまってとても残念です。でもノルマさんは本当に幸せそうでした。彼女の生き方こそ私の人生のゴールです。安らかに眠ってください。冒険することも忘れないで下さいね。ノルマさん、ありがとう。」
たくさんの想いに感謝しつつ、ノルマさんの家族はFacebookでこう述べている。
「この旅で生きること、人を思いやり愛すること、そして今を精一杯生きることを学びました。人の心がどんなに美しいものであるか、世界中の人たちに教えてもらった気がします。」
出典:http://www.abc.net.au
(TechinsightJapan編集部 A.C.)