ニュージーランド南島にあるクライストチャーチ・ボーイズハイスクールは約130年以上の歴史を持つ名門男子校である。文武両道で有名なこの高校で、卒業式と同等の意味をもつ各種成績優秀者を表彰する式典が11月4日に行われた。ニュージーランド・オンラインニュース『Stuff.co.nz』が、生徒会長である少年の胸を打つスピーチの内容を伝えている。
「式の進行に少々変更があります。生徒会長ジェイク・ベイリーさんがこれからスピーチをします。入院中で長くはいられませんが、温かく迎えて下さい」とニック・ヒル学校長のアナウンスに続き、車椅子に乗ったジェイク・ベイリーさん(18)が舞台に現れた。会場が静まり返ると、彼は「この日のための原稿はかなり前にできていたんだ。でも式の1週間前に僕はガンの宣告を受けた。医師からは3週間以内に治療を始めなければ命が危ないと宣告され、今日のスピーチは無理とも言われた。でも幸運なことに僕はこれからそのスピーチを始めようとしている」と、聴衆をしっかり見つめながら語り始める。
約1か月前から体調が優れず入院検査を受けていたジェイクさんは、医師から最も増殖速度の速い病理組織型である「バーキット非ホジキンリンパ腫」との診断を受ける。入院して1週間だが、このスピーチのために病院から特別に許可をもらい、最後となる制服に袖を通し、車椅子に乗りながらも強い意志をもって今日の晴れの舞台に臨んだのだ。
「だれでもいつかは死と向き合うことになる。だから勇敢であれ。偉大であれ。恵み深くあれ。これからの僕たちの人生にはあらゆるチャンスがあるということに感謝しなくてはいけない。これから先、どこで何をしているのかなんて分からない。いつ死ぬかもわからない。未来は僕たちが握っている。人生の大きな夢を語る前に、目の前の目標に向かって今、この時を精一杯生きよう。」
ジェイクさんはラテン語であり学校のモットーでもある「Altiora Peto(志を高く持て)」の言葉でスピーチを締めくった。
19分近くにもわたるスピーチをじっと聞き入っていた聴衆だが、総立ちの拍手喝采が沸き起こった。ジェイクさんの頬には涙が伝い落ち、会場のあちこちからは相手に対し敬意や感謝の意を表する舞である“ハカ”が披露され、クラスメートたちの力強い声が会場に響き渡る。ジェイクさんは友の姿をじっと見つめ、天を見上げて目を閉じ「ありがとう」と静かにつぶやく。どこからともなく校歌が聞こえてくると皆で合唱が始まり、ジェイクさんも一緒に口ずさむ。その後、学校全体でジェイクさんが舞台から去るのを見送った。
ニック学校長は、化学療法を受けるジェイクさんに代わってスピーチを読む準備をしていたそうだ。ジェイクさんについて「彼は本当に強い。可能性をたくさんもっているし、なんといっても輝いている。彼がスピーチしたことは素晴らしいことだ」と語っている。
※ 画像はmetro.co.ukのスクリーンショット。
(TechinsightJapan編集部 A.C.)