このほどオーストラリアで、ある中学校の女性教師が教え子であった男子生徒を2年以上も自分の自宅に住まわせていることが発覚。少年は「母親と衝突して家出した」としているが、その母親と女性教師の話には食い違っている点も多く、家庭裁判所は頭を抱えているもようだ。
シドニー郊外のパラマタ在住で、中学校の教師をしている46歳の女性。自身にも5人の子供があるが、その自宅には「私が育てている息子」と称するもうひとりの少年が住んでいた。それはかつて受け持っていた教え子。2年以上にもわたるその同居生活について、女性教師は家庭裁判所に「軟禁などの犯罪行為ではない。少年を取り巻く家庭環境は複雑。少年の身の安全のためにかくまっていた」と説明している。
その奇妙な“親子関係”が発覚したのは、ひとりの児童相談員が家庭裁判所のヒラリー・ハンナム裁判官に、「教師の権限や常識の範囲を超えて、生徒との関わりを深めている中年の女性教師がいる」と報告したこと。そこで家庭裁判所が介入した次第だが、両者の間に性的な関係はなく、少年は実の母親を嫌っており、7年生の時の受け持ちで放課後などに熱心にマンツーマンで指導してくれたその女性教師を慕い、13歳半であった2011年に自ら家を飛び出していたことが分かったという。
その際、少年は女性教師に「家で母親による心身の虐待を受けていた。多くの手伝いを強いられ、妹や弟の世話を一晩中みなければならなかった」などと話したというが、これについて母親は「この子は注意欠陥多動性障害および軽度の知的障害があると診断されており、私がどう注意しても無視するために厳しくせざるを得なかった」と釈明している。また少年の父親はたった12歳にして父親になったルーズな男で、薬物乱用と刑務所暮らしを繰り返しており、家庭裁判所の職員には「先生のお宅でお世話になるのが息子にとっては一番の幸せだと思う」と語ったそうだ。
また女性教師は、「2011年に少年から家を出たいと相談された時に、逃げるなら母方の祖母の元へとアドバイスしたことがある。しかしその年の5月に少年が家出を決行した時、祖母はすぐさま孫を警察に突き出してしまった。それを迎えに行ったのは私で母親もそれに同意していた」と説明しており、母親はこれについても否定している。女性教師は子だくさんで愛情深い人柄ではあるが、この少年に関しては私的感情から深く関わりすぎた感も否めない。またその少年について行方不明の捜索願を出すわけでもなかった母親にも多くの問題がある。育ち盛りでもあるこの少年は今後、いったいどこで誰によって育てられるべきなのか。そう頭を抱えている家庭裁判所は少年、学校、教師、家庭そのすべての名を伏せ、警察が介入すべき「事件」とは捉えたくないとしている。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)