サウジアラビア南西部ジーザーン州の病院で、12歳の少女がヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した血液を輸血され大問題となった。特に保健省職員の怠慢な対応と保身のための行動が目立っており、批判が集中している。
『CNN.com』によると、鎌状赤血球貧血症の患者であるこの少女は今月12日、彼女とその家族が住むジーザーン州の病院で輸血を受けた。だが数時間後に病院の職員が自宅に訪れ、血液がHIVに感染したものであったことを家族共々知らされることとなった。
少女はすぐに検査のため、首都リヤドの大病院に搬送された。しかし、少女の父親はこの対応について非難している。当時の状況から施設の整った外国の病院に搬送すべきであり、事態は緊急を要していたにもかかわらず保健省職員の怠慢な指示により検査結果が出るまでの長い間、国内で無駄に待たされたからだ。
また『GulfNews.com』では、少女の親戚による証言を報じている。保健省の職員は少女の両親に対し「少女がこの先尊厳を持って生活できるように最大限の援助を行う」と話していたものの、これは一家が保健省を相手に裁判を起こさないための説得であったそうだ。
サウジアラビアの各メディアは今回の事件をひどい医療事故であると報道しており、保健省大臣は少女とその家族に謝罪すべきだとの声があがっている。こうした国中の非難を受け、輸血が行われた病院の総合責任者や担当者たちは事件後に解雇されているものの、事故発生当時の病院の状況や、その起因については明らかにされていない。
だが一家の怒りはこれで静まるはずがない。少女側の弁護士は、少女一家がこの事故対策に携わった保健省高官から輸血が行われた病院の従業員全員に至るまですべての関係者を訴えるつもりであると話している。またすでに何名かの弁護士が、裁判が行われた場合に一家を無償で支援する姿勢を見せているという。
(TechinsightJapan編集部 椎名智深)