エンタがビタミン

writer : sekihara

【エンタがビタミン♪】<大黒摩季インタビュー>25年分のベストアルバムはまるで「薬箱」

■ベストアルバムは復帰のご祝儀
―6年間の休養期間からの復帰というタイミングで、ベストアルバムを出されるわけですが。
大黒摩季(以下、大黒):ビーイングを出てからジプシーのようにいろいろなメーカーさんともやったりしているので、てんでばらばらだった子供たちを一斉に集めるというのは、来年25周年だし、復帰のタイミングということで、ありがたいことだなと思います。
しかも、他のメーカーさんたちとも、ちゃんと付き合ってきてよかったなと思うんですけど、今回はものの見事に許諾がおりて一気に全部収録することができた。みんな大黒摩季の復帰のタイミングだからこそご祝儀で、すっと貸し出してくれたと思うんです。

■薬箱のようなベストアルバム
―今回のアルバムと一言で言うと?
大黒:一家に一台、「薬箱」みたいになればいいなと思ってます。今日元気がなくて頑張らなきゃいけない日は『あぁ』を出そう、プレゼンで勝たなきゃいけない日は『熱くなれ』を出そう、恋愛で不意の別れが来たら『別れましょう私から消えましょうあなたから』というように薬箱(置き薬)って全部入っているじゃないですか。
私の友達が「摩季の曲って『関所』だよね」って。自分で等身大で書いてきたから、各年代で必ず行き詰まるところで私の曲が置いてある。私の曲は動かないから「みんな女の子が通っていく関所みたいになってるよね」って、そういう考え方もあるよねと(笑)。
一曲一曲聴いてみて、自分でもヒストリーを感じられて良かったですね。まあ、濃かったですけどね。おなかいっぱい。ステーキ弁当16曲、大根おろし持ってこい! みたいな(笑)。

―では、実際にベストアルバムが完成していかがですか?
大黒:みんな偉かったなと思いますよ。マスタリング、全部一緒にやりましたから。民生機(一般消費者が音楽を聞くためのハードや規格)が変わって、よもやスマホで聴く時代が来ると思ってあの時代作っていないですから、やっぱり出ない音もあるし、それをきちんと今に合わせてあげるのがマスタリングの作業なんですね。リミックスの方が楽だったぐらいですよね。
ベストの考え方はいろいろありますけど、私はあの頃の最高点がアルバムやシングルとして残っていると思っているので、別に歌い直すこともなく、ただ今の時代で聴きやすいというか、かっこいいというようにすべきだということにすごく凝りました。でも最後はパッと聞き、どんなハードで聴いても「大黒摩季、お帰りー!」ってなることが大事だね、って話になって、パワー感をそがずに今どきの音質に耐えうるものにしたという感じですね。

―こだわりを教えてください。
大黒:本人的には音とかテクニカルにはこだわるけど、商品にするときにこだわったのは、歌詞が裸眼で見えるとか私たち中高年の世代が見たときにいいものを作りたいということですね。
私は目が完全に老眼なんですけど、ブックレットの歌詞が小さすぎて見えない。なので、まずはブックレットを大きくしたい。でも、大きくするとラックからはみ出るし、その辺に置くのもイヤだから立つようにもしたい(三方背ボックスに)。だったら、いろいろおまけをつけるのはやめて、商品自体は良くしようと。

■歌詞をちゃんと“読み物”にしたい
―BIG盤はパッケージがA4サイズで、歌詞のブックレットも大きめなのですよね?
大黒:歌詞の行間とかマス目とかも本当にこだわってきて会話のように作ってきたのに、通常のサイズだと、歌詞が多いのでどうしても一行に書かされたりしてしまう。そのことに不満をもってきたので、もっと歌詞をちゃんと“読み物”にしたい。“音に救われたい日”と“人の言葉に救われたい日”は違うので、ちゃんと本にしたかったんです。

―STANDARD盤のジャケットは大黒さんの顔写真ですが、なぜあのお写真に決めたのですか。
大黒:あれは、スタッフが満場一致だったんですね。「今の摩季さんもいるし、若さもあるし、これ、かっこよくないですか?」って。
アルバムをインテリアに置くときにジャケットに顔がついてるのはイヤじゃない? だけど、みんながこの写真は「インテリアであってもかっこいいと思うよ」と言い出して、「じゃあ、そうしたいならそうすればいいさ」って感じで(笑)。もう、これぐらいになると投げ出せるんですよね。いい意味で。体を貸せるというか。
あと、BIG盤は大きいからジャケットは顔じゃない方がいいと思うよって。

■“作家”大黒摩季という生き方もあった
―来年からはツアーも始まりますね。
大黒:体のことを考えれば“作家”大黒摩季という生き方もひとつあったわけですが、体を大事にしても使わなきゃしょうがないという結論が出たんです。そして、私の体が一番喜ぶのはライブだって。
でも、スケジュール預けているうちにいっぱい埋まっていたんですよ。「ここはダメよ」って言わなきゃいけなかったといまさら思い出して…。びっくり! ひとりAKBみたいですよ(笑)。

―ツアーは全国47都道府県ということですが、ずいぶん細かく回られるのですね。
大黒:この歳になるとお子さんがいたり、旅費を捻出するのも大変で出掛けることが難しいじゃないですか。さらに、人間の筋論としてご挨拶するのって、こっちが出向くものじゃない?
大きい会場に呼びつけて、「はい、復活しました」というのも自分の性格に合わないので、47都道府県ご挨拶めぐりしてから大きい会場をやりましょうよ、ということになったんです。若いときみたいに2週間出っ放しというのはありえないので、そこは年齢層的にも週末のみにしてくださいと言えば、25周年の間、小一年かけて行くことになりますね。突っ走ると忘れ物も多いけど、速足で歩いている分だったら落とし物にも気づけるじゃないですか。それぐらいのタームで行きたいですね。
(TechinsightJapan編集部 関原りあん)

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