writer : tinsight-yokote2

甲状腺ホルモン薬、国内シェア最大手の工場が操業停止。

甲状腺機能低下症の人が必要とする甲状腺ホルモン薬。その薬においては国内最大手のシェアを誇る製薬会社の工場が、この大震災の影響で製造および出荷がストップした。一体どうなるのだろう。

生命維持のために人工透析が必要な患者さんがいるように、甲状腺機能低下症の人にとってもこのホルモン薬は命綱のようなもの。医師の指示がある限り、延々と飲み続けなければならない。

甲状腺ホルモン薬においては、国内シェアなんと9割超という「チラーヂンS(成分名レボチロキシンナトリウム)」を製造していた「あすか製薬(東京都港区)」の福島県いわき市の工場が、この大震災で損傷を受けたことを理由に17日、操業および出荷を停止したことを発表した。

薬の効果は(最後に飲んだ日から)1週間ほどかけて徐々に減じて行くにせよ、甲状腺ホルモン薬を必要としている患者が全国には約30万人もいる。他社への製造委託と同時に、薬事法を超えての海外からの輸入支援に頼らざるを得ないであろう。

国内シェア残りの数%は、外資系の製薬会社「Sandoz(サンド=東京都港区)」によるジェネリックの「サンド(成分同じ)」という薬。同社のHPには「山形県上山市の工場で操業再開し、順次生産を行っております。被災地への供給につきましても、安定供給に全力をあげて取り組んでまいります」とある。政府の緊急な対策を強く望むとともに、Sandoz社の製造ラインの増強に大きく期待したいものである。

大切な治療薬も、国内シェアに大きな偏りがあったために、こうした大災害をきっかけにいとも簡単に供給困難に陥る、これは甲状腺ホルモン薬に限ったことではないはずだ。地震に台風に原発事故と災害大国と化した日本にあっては、医薬品の製造に関しても国内分散が大切であることを痛感する。

参考あすか製薬:http://www.aska-pharma.co.jp/pdf/company/news20110317
およびSandoz:http://www.sandoz.jp

(TechinsightJapan編集部 古瀬悦子)