writer : techinsight

【ドラマの女王】「怨み屋」稼業はドラマの中だけで・・。「怨み屋本舗REBOOT」

怨みを抱く人から復讐を依頼された「怨み屋」が、依頼人に代わって復讐をしていくストーリー。一見平穏に見えるいつもと変わらない日常に、「怨み」という強い感情や、「怨み屋」が存在しているというところが非常に怖いドラマである。

まず、落ち着いた抑えた演技ながら静かな迫力を感じさせる怨み屋(木下あゆ美)が魅力的。また、「いつでもタバコを吸える場所にいたいだけ」と言い、めったに外出しない、ほぼ引きこもり状態の情報屋(加藤雅也)、マクロイン王国の住人と信じ込んでいるオタク(前田健)など、普段なかなか表舞台で脚光を浴びるチャンスがないような人たちが、水面下で活躍しているというのがいい。加藤雅也は純粋な二枚目よりも、「アンフェア」の検視官のように、ちょっと癖のある二枚目半の役の方が印象に残る気がする。

そして、ゲスト陣のキャスティングが秀逸。中村有志は、別の復讐代行業者として登場。彼はパントマイマーとしても有名だが、同じテレビ東京で放送されていた「TVチャンピオン」でも出場者にインタビューするなど、タレントとしても活躍している。温厚そうな丸顔で、実際には復讐代行業者というところが怖い。冷ややかな目の演技が光っていた。また、別の回に登場した姉(播田美保)、弟(六角慎司)も、思い込みの激しい姉と、姉を絶対的な存在として盲目的に慕う弟という癖があるこの役柄に見事にハマっていて、本当にこの人たちが存在するのではと思えるほどだった。

また、主題歌はスピード感がありスリリングな曲でこのドラマにぴったりだ。それにしても、アーティスト名が「鴉」(からす)とは出来すぎではないだろうか。カラスなんて闇のチームに似合いすぎる。

ひとつ不思議なのは、怨み屋が真っ赤な服を好んで着ていること。さらに、車はオープンカーを使用するときも。常識的に考えれば、こういった隠密活動をしている以上、目立たないようにするのが鉄則だと思うが、これではまるで「見てください」と言っているようなもの。これはテレビ上、華やかにするための演出なのだろうか。

今後、注目したいのは、テレビ局報道記者・星影(長谷部瞳)。怨み屋について取材を続けてきたが、いよいよ核心に近づきつつあり、正義感あふれる星影が怨み屋を撲滅するのか、あるいは過去に忘れられない事件で心の痛みを抱えている彼女が怨み屋を黙認するのか、さらに自分も復讐を依頼するのか、そのあたりが見所だろう。

ただ、「怨み屋」はあくまでもドラマの中でのみ許容されること。このドラマの中に出てくるエピソードはあまりにもひどく、怨みを抱くのも仕方ないと思えるほどだ。しかし、怨みを抱くたびに復讐していたら、その復讐がまた怨みを作り・・・という怨みの連鎖を生み出さないとも言い切れない。怨みを抱いたとしても、その気持ちに囚われてばかりいたら前へ進めない。このドラマが、そんな”心の闇”のモヤモヤを晴らす助けのひとつとなるといいのだが。

(TechinsightJapan編集部 関原りあん)