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あなたの一票は本当に一票!?『一人一票実現』バーチャル投票のススメ

2009年の衆議院選挙戦も終盤を迎え、8月30日が投票日となる。今回の選挙は政権選択選挙とも言われて注目を集めているが、一票を投じる有権者の多くが忘れていることがある。それは一票の価値に差があるということである。ちなみに当編集部のある東京都港区では、一票の価値は、衆議院議員選挙で0.47票とのこと。自分の一票が、一票分の価値がないとはいったいどういうことなのだろう。

一人一票実現国民会議による『一人一票実現』サイト(http://www.ippyo.org/)では、自分の一票が本当はいったい何票に値するのかを確認してもらい、その一票の不平等が、最高裁の判決によって是正されるよう、最高裁裁判官の国民審査バーチャル投票を実施している。自分の一票が実際は何票なのかは、このサイトで、自分が住んでいる場所を選べば簡単に分かる。その後、最高裁裁判官の不信任・信任を選べばバーチャル投票が完了だ。8月28日午前8時の時点で16241人がバーチャル投票に参加している。

1980年代には「一票の格差」という言葉が選挙のたびに大きく報道されていた。近年はあまり聞かれなくなっているのはマスコミが飽きてしまったのかもしれないが、問題がなくなったわけではない。

一票の格差とは、選出される議員1 人当たりの人口(有権者数)が選挙区によって違うため、人口(有権者数)が少ない選挙区ほど有権者一人一人の投じる一票の価値は大きくなり、逆に人口(有権者数)が多い選挙区ほど一票の価値は小さくなるという現象のことである。言い換えれば、一票の価値は住所によって差別されているのである。

これがなぜ問題かと言えば、憲法が保障する「法の下の平等」に反すると考えられるからである。国民が行使する公民権は高額納税者であっても、失業者であっても、等しく保証されなければならない。

この一票の格差による不平等の問題は、これまで数多く訴訟が提起されてきているが、最高裁判所の判例は、「あまりにも極端な格差」以外は合憲としている。

かつては、最高裁判所裁判官国民審査について有権者はあまり興味を持たない状況が長く続いたが、近年は各裁判官のこれまでの主な裁判事例が選挙公報に掲載されるようになり、国民の関心も高まっている。

政権選択も大事だが、近年電波メディアや紙メディアがあまり報道しなくなった、「一票の不平等」問題を、ネットという媒体で考えていこうという『一人一票実現』サイトの試みは注目に値する。

居住地という制約のないネットにおけるバーチャル投票は、真の意味で一人一票である。自分の一票の価値を知って、どうすればそれを是正できるのか考えるための機会になるであろう。
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)