服を着る時、食事をする時、寝返りを打つ時など皮膚は常に何かに触れている。しかし生まれつきの遺伝子の変異により、皮膚へのわずかな刺激でも激痛が走り、傷や水疱になって全身に広がっていく難病「表皮水疱症(EB)」と闘う人が日本では少なくとも1000人、アメリカでは10万人いると言われる。自らもEBで苦しみながら「この病気を多くの人に知って欲しい」と活動を続ける20歳のマーキー・ジャケスさん(Marky Jaquez)を『Love What Matters』などが伝えた。
米カンザス州に住むメリッサ・ジャケスさん(40)は今から約20年前、20歳で5歳、1歳、0歳の3人の子を持つシングルマザーとなった。長男のマイケルさん(25)は健康だったが、父親が違う次男のカルロス君と三男のマーキー君は治療法が確立されていない難病「表皮水疱症(EB)」をもって生まれ、メリッサさんは両親と同居して必死の看病を続けた。
EBの患者はちょっとした刺激や摩擦で全身の皮膚が剥がれたり、水疱ができる。重症化すると手足の指が癒着したり、感染症、潰瘍、皮膚がん、そして内臓障害などの合併症を起こすこともある。症状には個人差があるが、カルロス君とマーキー君は重症で皮膚だけでなく目、口、身体の内部の粘膜にも爛れが生じ、食事を摂るのも困難で低栄養状態が続いた。
EB患者の大半は小児で、脆い蝶の羽にたとえて「バタフライ・キッズ」とも呼ばれており、年を重ねる毎に症状は悪化する。メリッサさんは2010年に結婚したが、2013年には当時まだ14歳だったカルロス君を亡くし、現在は20歳になったマーキーさんと夫の3人で暮らしている。
そんなメリッサさんは毎朝、マーキーさんの皮膚の症状を軽減するためのガーゼを取り換える。全身につけたガーゼを剥がす時には皮膚も一緒に剥がれてしまうことから注意が必要で、マーキーさんは「毎日のことだけど、ガーゼ交換は本当に痛いんだ」と目に涙を浮かべる。
メリッサさんは「EB患者の苦痛は、致死的な疾患の中で最も酷いという調査結果があるの。骨肉腫の痛みより酷いそうよ。この病気と闘うことは肉体的、精神的な痛みとの闘い。本当に覚悟がいるの」と語ると、7年前に亡くしたカルロス君についてこう明かした。
「カルロスの症状はマーキーよりも酷く、『生きたとしても11歳が限界だろう』と言われていたの。あの子は3年も長く生きたけど、死は突然やって来た。検査のために初めて飛行機に乗って、病院を訪れた直後に亡くなったのよ。」
「カルロスの死を誰よりも悲しんだのは、マーキーだったと思う。だって2人は何をするにも一緒だったから。お互いが大切なパートナーだったの。カルロスを亡くしてから、私は『マーキーもいつか、私よりも早く逝ってしまうに違いない』と思うようになった。マーキーは私の全てよ。だから今は家族としてできるだけのことをしてあげたい。思い出を作るとか、そんなもんじゃないの。だって思い出は消えてしまうでしょう。私は一瞬一瞬を大切にしたい。毎日を喜びと愛と笑みでいっぱいにしたいの。」
一方のマーキーさんは、