北大西洋に浮かぶデンマーク自治領のフェロー諸島でこの夏、伝統のクジラの追い込み漁が行われた。浅瀬に追い込まれ仕留められたクジラやイルカの様子は、動物愛護団体のシーシェパードによって捉えられ、ホームページやFacebookに投稿された。また今月10日には『Fox News』が独占記事で伝え、物議を醸しているようだ。
人口5万人足らずというフェロー諸島は観光業のほか水産業、野鳥狩り、羊の放牧、酪農、そして捕鯨が盛んなこととして知られている。火山でできた痩せた土地での農業は非常に難しく自然条件が厳しいこの地域では、クジラ(主にゴンドウクジラ)の肉と脂肪は貴重な資源であり、16世紀ごろから追い込み漁が始まったとされている。
隠すことなく行われるこの追い込み漁は、シーシェパードなど反捕鯨団体の激しい批判に晒されており、7月から9月初旬の10週間で行われた漁ではイギリスやフランスからのボランティア18人が監視を行った。述べ9回にわたる漁は同団体によってフィルムに収められ、少なくとも198頭のタイセイヨウカマイルカと436頭のクジラが捕獲されたことが明らかになった。
漁は、漁師たちが沖でクジラやイルカを見つけると住民に合図を送りスタートする。群れは合図によって駆け付けた漁船に囲まれるようにして湾に追い込まれ、待ち構えていた住民によって仕留められる。その様子は凄まじく、腰まで海水に浸かった男たちが噴水孔にロープのついた銛を差し込み、パニックに陥った個体を次々と浜辺に引上げていく。こうして捕らえられたクジラやイルカは特殊なナイフで首の主動脈や脊髄を切断されて息絶える。ほぼ即死の状態だが、これによって湾は血の海となり真っ赤に染まっていく。
監視したシーシェパードのボランティアは「小さな子供がポケットナイフを使ってクジラの歯をえぐり取っているのを見た」「行き場を失ったクジラが岩に頭を打ち付けて苦しんでいた」「内臓が露出した状態で地面に放りだされている。見るに堪えない」「これは野蛮な行為以外のなにものでもない」と口々にその衝撃を語っている。