84年の名作映画『スプラッシュ』の人魚役などで知られ、最近では03年の映画『キル・ビル』などでも熱演を見せていた女優のダリル・ハンナ(50)が、米ホワイトハウス前で開かれた、オイルサンドのパイプライン建設に反対する環境保護グループの座り込みデモに参加。他の参加者らと共に警察に逮捕された。
ハードコアな環境アクティビストで、エコマテリアルで造られた家に住み、太陽熱発電で電気をまかない、バイオ燃料で走る車を運転しているハンナ。また、反捕鯨を掲げて捕鯨船などに過激な妨害活動をする海洋環境保護団体、『シーシェパード』を支援していることでも良く知られている。
そのハンナが8月30日、オイルサンドに反対する『Tar Sands Action』などの環境保護団体の連合が米ワシントンDC、ホワイトハウス前の広場で開いた、大規模な抗議集会に参加した。この集会は、カナダ西部・アルバータ州と米・テキサス州を結んで、石油と砂の混じった「オイルサンド」を運ぶパイプライン『Keystone XL pipeline』の建設に反対し、20日から10日間連続で行なわれているもの。
このパイプライン、実に米7州の地下を貫く全長約2700kmという長さであるため、途中で燃料が漏れる危険があること、また、運んだオイルサンドを精製して石油にする際に、さらなる温暖化ガスが発生することなどから、環境保護団体をはじめとする反対派が槍玉に挙げていた。
ハンナは30日、手書きの抗議バナーを手に座り込みに参加。立ち退きを要求する米パークポリスの呼びかけを3回無視したため、他の座り込み参加者と共に、警察官に後ろ手に手錠をかけられ「市民的不服従」の罪により連行された。ハンナは手錠をかけられる瞬間も、「No to the Keystone pipeline!」と抗議の声を上げていたという。30日だけで、同じ抗議集会から143人が逮捕されるという一種の「パフォーマンス逮捕」であるが、いちいち連行し処理をする警察側も大変であろう。
アクティビストであるハンナは、こうした逮捕劇には慣れている。06年にはロサンゼルス市による都市農場取り壊しに抗議して、農場の木に自分の体を鎖でくくり付けるデモを行い逮捕。09年にはウェストバージニア州で、炭鉱の露天掘りに伴う「山頂除去法」に抗議するデモに参加し、路上に座り込んで逮捕されている。
ハンナは今回逮捕される直前、『AP通信』に「我々は石油燃料への依存から脱却すべきで、その替わりにクリーンエネルギーに関する投資を増やすべきだ。オバマ大統領には、石油ロビイストの圧力に屈しないでもらいたい。」などと語った。
しかし、依然不安定な中東情勢をかんがみながら、米オバマ政権はオイルサンドを貴重な石油燃料代替資源としてとらえている。同パイプラインについては、2013年の稼働を目指して、米国務省も「環境に特段の影響はない」として、青信号を出したばかり。パイプライン反対派は、今月3日まで抗議活動を続けるとしているが、現在までの逮捕者の数は実に595人にのぼるといい、今後もさらにその数は増しそうだ。
(TechinsightJapan編集部 ブローン菜美)