writer : tinsight-takazawa

『まずは、野菜を食べやさい!』 くら寿司の「シャリ野菜」誕生秘話を開発担当者に聞く

「寿司」と聞けば、誰もがシャリ(酢飯)の上に寿司ネタをのせた姿を思い浮かべるだろう。シャリが別の食材に代わったら、それはそもそも寿司と呼べるのかどうか―。SNSで「何故作った」「寿司への冒涜だ」など賛否両論ながらも10日間で100万食突破したのは、「くら寿司」の「糖質オフシリーズ」だ。これはシャリの代わりに大根を使った寿司や、まさかの「麺抜きらーめん」など、言わば掟破りのオリジナルメニューだ。このようなメニューをなぜ作ったのか。担当者の裏話を紹介する。

「くら寿司」の「糖質オフシリーズ」は、シャリが野菜になった寿司「シャリ野菜」、ラーメンなのに麺がないラーメン「らーめん麺抜き」、小さなシャリで食べやすい寿司「シャリプチ」の3種類。SNSで否定的な意見もあるというが、実際に店舗で食べた人からは「お寿司が大好きなのに、ダイエットのため我慢していたので、とても嬉しいです」「健康のために糖質オフの食事をしていますが、家族と一緒にお寿司を食べに行けず、残念に思っておりました。昨日、糖質オフのお寿司を食べて、とても美味しく満足しました」「ダイエット中に、家族と一緒にお寿司を食べに行くとき我慢するのが辛かったのですが、これだったら気にせず美味しく食べられるので助かります!」と歓迎する声も届いているという。

くら寿司「糖質オフシリーズ」より

このメニューの開発の経緯について、株式会社くらコーポレーション常務取締役・製造本部長の久宗裕行氏は「糖質オフシリーズにおいては(糖質制限ダイエットが)ブームになる前より着手していました」と早い時期から取り組んでいたことをまず明かした。そして「(これまで)“四大添加物 無添加”への取り組みなど自分たちが正しいと思うことを愚直に体現してきました。食を通じて、健康への配慮を真面目に考え、真摯に創業以来取り組んできており、その取り組みこそが、この度の糖質オフシリーズの販売に至った大きな理由です」と企業姿勢に則ったメニューであることを説明した。

株式会社くらコーポレーション 久宗裕行氏

しかし開発には難航したという。「社内でも賛否両論。もちろん開発においても非常に苦労致しました」「相当な試行錯誤をしました。シャリを使うのが当然の寿司から“糖質カット”するのは相反することですので。最初は『ネタを野菜にしよう』から始まりましたが、いざ糖質を調べるとそこまでは変化がない。やはりお米をなんとかしなければ、とみんなで悩むなかで、ふと出てきたのが大根の細切りでした」とシャリを工夫することが必須だったと振り返る。

その後も「(大根が刺身のツマのようなものだと)『それじゃただの刺身じゃないか』という話で。今度はまた別の案が浮上して。何度も試行錯誤を繰り返しているうちに、ようやく大根だけでやってみようとなりました。完成に至るまでかなりの時間がかかりましたね。大根の味付けにはどんな酢が合うのか、どれくらいの細さや長さがベストなのか……」「私たちはシャリに信念を持っているので、お酢に関しては得意分野です。いろいろな引き出しの中から大根に最も合う合わせ酢を作りました。もちろん、お米に使用する酢とは違う独自のものです」と切り方や味付けにかなりこだわり、納得のいくものに仕上げたようだ。その甲斐あって「シャリ野菜」の「えび」では糖質88%オフに成功した。

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