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writer : tinsight-yokote2

【海外発!Breaking News】退役軍人向け保養施設に削減の波 名門ゴルフ場に集まった寄付金はたったの600ドル(米)

知る人ぞ知る、ワシントンD.C.の秘境ともいうべきそのゴルフ場の名は「オールド・ソルジャーズ・ホーム・ゴルフコース」。「アメリカ・カトリック大学」と「ハワード大学」の間に位置する総面積272エーカーの静かな退役軍人向けコミュニティの一角にあり、東側には有名な「無原罪の御宿りの聖母教会」のドーム状の美しい屋根を拝む。コースは128エーカーを広々と使用した9ホールで、1930年代から約80年にもわたり“ティー・タイム(スタート時間)の予約すら要らない退役軍人の特典”として存在していた。

会員数は一般市民を少し含む200名余りというそのゴルフ場に大きな注目が集まってしまったきっかけは、そのコースや施設の老朽化が進み雑草も伸び放題で大掛かりな修繕が必要となったことにある。同メディアの取材に会員らは、「12年前はこのあたりで最も素晴らしいゴルフ場だったのに、どうしちゃったんだ」「潜水艦のことしかわからない俺に運営の難しい話をされても困るよ」などと話し、国防総省からの予算の削減に誰もが苛立ちを募らせているとした。

そのコミュニティも昨年あたりから民営化の波が押し寄せており、約80エーカーの土地を利用して民間経営による商業オフィス、ホテル、店舗、医療施設などの開発が始まる見込みである。そうなればゴルフ場もネーミングライツパートナー制度(企業名や商品名を冠とする権利を販売し、収益源とすること)や後援会制度を導入し、企業スポンサーを募ればよさそうなものだが、問題は退役軍人らがたった700ドルの年会費と格安な料金でゴルフを謳歌していた、その既得権を簡単に返上するとは思えないことだ。

問題のゴルフ場の運営にあたっているという「Golf Course Guardians」という組織は、インターネット募金サイトの『YouCaring』を通じて“オールド・ソルジャーズ・ホーム・ゴルフコースの美しいグリーンを維持するためにご協力を”と12月15日を期限に善意の寄付を呼び掛けているが、25万ドルの目標額に対して集まったのは現時点で600ドルにも満たない。

全米各地の退役軍人向けコミュニティの維持運営のために毎年大変な額の予算を組んでいるアメリカだが、軍事費も殉死した兵士への補償もうなぎのぼりという昨今、この一件でわかるのはレクリエーション施設にまで回す予算が尽きているということ。国防総省は全米ばかりかカリブ海、ヨーロッパ、アジアなど世界各地に保養施設を持つが、ゴルフ場の数も215と大変なものである。ワシントンD.C.のゴルフ場が「廃止」の方向に進めば、老朽化や人気の低いほかの施設にも影響を与えかねないであろう。

出典:https://www.washingtonpost.com
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)

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