麺類、ビール、パンなどを摂るとどうもお腹の調子が悪くなるという人は、一度は小麦や大麦などに含まれる「グルテン」というたんぱく質が体に合わないのではないかと疑ってみた方がよいと言われている現代。そこには「セリアック病」なる厄介な自己免疫疾患が潜んでいることがある。
「セリアック病」という病気をご存じであろうか。小麦・大麦・ライ麦、デュラム・セモリナなどに含まれるグルテンというたんぱく質に対して過剰な免疫反応が働き、自ら小腸を攻撃して消化不良を起こすほか、さまざまな身体の不調や病気の引き金になってしまう自己免疫疾患である。英国でこのほど、実に50万人がその「セリアック病」であることに気付かずに暮らしているとの新しい調査結果が発表され、動揺が広がっている。
英・ノッティンガム大学の研究チームは、遺伝性自己免疫疾患でもあることから英国の国民100人に1人がこの病気の患者であろうと推定。ただし「セリアック病」と診断されている人々は全患者数のたった24%であり、約50万人がいまだに診断を受けていないことになると発表した。世界各国で患者数は100~150人に1人と言われてきたが、英国も例外ではなさそうだ。日本でもパスタ、パン、うどん、ビールなどで消化不良を起こすとして医師の診察を受け、そこで初めて「グルテン過敏症」、「グルテン不耐症」、あるいはこの「セリアック病」と診断される人が近年非常に増えている。またアメリカでは1980年から患者数が急増し、現在の数は当時のなんと4倍にも上る。何歳で発症するかは個人差があるが、この病気だと分かると朝食ではおなじみのはずのシリアル、パンケーキを我慢しなければならず、「グルテンフリー」のメニューを置いているレストランや、代用となる米粉などを扱うスーパーマーケットは増える一方だ。
最近では多くが成人で発症しており、引き金になるのはウイルス感染、手術や出産、強いストレスなどの心身の著しい変化だと言われている。腹部膨満感、ガス、腹痛、繰り返される便秘と下痢に苦しむようになり、貧血や関節痛がある場合はただの消化不良や腸内環境の悪化で済まないこともあるため、要注意だ。また乳幼児で発症すると発育不全や消化不良が目立つという。治療法は「グルテン」を摂らない食生活を一生続け、小腸を守ること。ちなみに一般的に知られている「小麦アレルギー」とは急性で発疹、鼻、のど、目などにアレルギー症状を起こすことを指す。一方「セリアック病」では、小麦粉の含まれている食品を全面的にストップして様子を見てみると、長く原因不明であった体調不良が著しく改善することもあるという。
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(TechinsightJapan編集部 Joy横手)