ケープタウンではアウトドアでの人気レジャーのひとつに、ハイキングがある。テーブルマウンテンや喜望峰、エレファント・アイ(象の目)など、至る所に家族で楽しめるトレッキングコースが存在している。一方で、ハイキング中に襲われるケースも少なくない。こういうケースは、とにかく貴重品を全部渡すことが最善であるようだ。
ケープタウンのサマーセット・ウェストで心理学教授をしている男性、コンラッド・ジグモントさんは、ハイキング中に恐ろしい体験をした。
1月4日午後、昼寝をしている妻と3歳の子供を家に残し、生後8か月の娘と散歩に行くことにしたジグモントさん。よく行くハイキングコースの「ハントウ・パス(Gantouw Pass)」入り口まで車で行き、そこから娘をベビーカーに乗せて歩き出した。そして夕方5時過ぎ、車まで戻る途中の道で2人の男が向かってきた。はじめは仕事帰りの2人組が歩いていると思っていたジグモントさんだったが、1人はジグモントさんに、もう1人はベビーカーへとやってきて、男はジグモントさんに携帯電話、財布、車の鍵がどこにあるのか聞いてきた。
ジグモントさんは「財布は車にある。全部持って行っていいから子供を返して欲しい」と頼んだ。しかし、相手は狡猾なことに「子供を返して欲しければ言うことを聞け」と脅してきた。携帯電話はベビーカーにあったが、そのことについて黙っていると、男らはベビーカーから携帯電話を発見してしまった。怒った2人組は地面に伏せるようジグモントさんに命じた。このまま男たちの指示に従った場合、暴行を受け子供を連れて行かれるかもしれない。それだけでなく最悪2人とも殺されるかもしれない。
覚悟を決めたジグモントさんは、瞬時にベビーカーから子供を抱え、逃げ出した。ジグモントさんは、機転を利かせて車が置いてある方とは逆の方向へ走り続けた。そうすれば、2人組はジグモントさんたちを追うか、車を盗むために車に向かうかどちらか選ぶことになるからだ。100メートルほど走ったところで振り返ると、2人組はどちらに行くか揉めていたが、その後、車の方へと走っていったのだった。
何とかして国道沿いに戻ったジグモントさんは、走っていた車を停めて運転手に電話を使わせてもらった。車の中に住所を示すものがあれば2人組は家に行くかもしれないと考え、妻に電話するとすぐに家を出て近所の家で待っているよう伝えた。
翌日、警察はジグモントさんの車を現場から20キロほど離れた場所で発見したが、スピーカーやラジオなど車内の付属品はほとんど持ち去られていた。
「ハイキングをするとき、気をつけることはバブーン(野生の猿)だと言われている。バブーンの行動は予測しやすいが、人はまったく予想外の行動をする。いつも行く場所でも1人で行くのは非常に危険なことだ」とジグモントさんは述べている。
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(TechinsightJapan編集部 FLYNN)