少し前には持病の「てんかん」による重度のけいれん発作に苦しみ、生死をさまよったことが大きなニュースとなっていた人気ラッパーのリル・ウェイン。彼がある曲が原因で、契約していた飲料メーカーのCMから降ろされてしまった。
日本でも販売され、蛍光色のような鮮やかなグリーンのボトルがひときわ目立つ、かんきつ系風味の弱炭酸飲料「マウンテンデュー(Mountain Dew)」。アメリカで放映されているCMに何本も出演してきたのは、ラッパーのリル・ウェインであった。しかしそのCMが突然見られなくなるという。
「マウンテンデュー」を販売するペプシコ社は今、ウェインに対して「けしからん! とんでもないイメージダウンだ」と激怒している。それは彼が2月に発表した“Karate Chop”という曲の中でこのように歌い、ある少年の遺族をひどく傷つけたことが原因である。
♪鎮痛薬をジャンジャン飲んで打って、俺のスケートボードにリムをとりつけたら、あの女をエメット・ティルみたいにめちゃくちゃに暴行してやるぜ♪
エメット・ティルというのは、1955年にミシシッピ州で惨殺されたアフリカ系アメリカ人の少年の名前である。14歳であったエメット少年は白人女性にちょっかいを出したと疑われリンチを受け、川に投げ込まれた。人種間の敵対感情が増幅したことに加え、激しい暴行ゆえに形をとどめていないエメット少年の顔写真が公開されたことから、「壮絶なリンチ死」の代名詞として人々に語り継がれている。
当然ながらティル家がこの歌詞に激怒し、代表してエメット少年のいとこがウェインに対して苦情を申し立てた。ウェイン側はさっそく反省と謝罪の意を手紙にしたため、“エメット・ティルなし”のバージョンを作成し、今後のCD販売、ラジオ、コンサート、インターネットなどではそちらで対応することを約束しているが、遺族は「反省がほとんど感じられない短い文章」として却下したもようだ。
「マウンテンデュー」に限らずだが、出演者に不適切な言動があるとそのCMはピタッと流れなくなり、メーカーの損失は計り知れない。それを考えると品行の怪しいラッパーの起用は大変リスキーと言えよう。「契約中は過激な言動をいっさい慎む」といった誓約書にサインをさせることができれば話は別であろうが…。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)