南アフリカの公共交通機関にようやくメスが入った。悪評高い鉄道メトロレールが設備、システムなどを全面的に見直す計画が発表されたのだ。
「時間通りに来ない」、「落書き、座席の切り裂きで車内が汚い」、「夜乗ると襲われる」など国民の悪評から逃れられずにいたメトロレール。そのメトロレールを運営している南アフリカ旅客鉄道公社(PRASA)は、ようやく本腰を入れることとなった。
PRASAの最高経営責任者であるラッキー・モンタナ氏は12月11日、「現在運行中の車両は全て一新する。安全度を高め、シートを大きくし、新しい技術を取り入れる」と発表した。車両にはエアコンや監視カメラが導入され、路線地図、車内アナウンス、通信装置の搭載などが決まっている。長距離車両には、Wi-Fiやトイレなどが設置される。
さらに、運転手が速度を上げすぎた場合や線路での車両同士の接近、踏切が降りていないのに列車が近づいている場合には自動的にブレーキがかかるシステムも導入される。車両は身障者や車椅子の乗客にも無理なく利用できる設計にするそうだ。また2015年までには、朝夕の通勤時に3~5分間隔の運行をする予定。車両だけでなく駅や変電所も、電気供給が止まることがないようにするとのことだ。
車両の扉は自動開閉になるので、満員の際に扉を開けたまま走行するという行為もなくなるだろうとモンタナ氏は述べている。
現在運行中の車両の90%はなんと1950年代のものだそうだ。ハウテン州、ダーバン、西ケープ州、東ケープ州の主要路線を走る4638車両の平均使用年数は39年である。「過去30年以上、誰も鉄道に投資しなかったのは南アフリカにとって最大の過ちだ」とモンタナ氏は語る。新しい車両は、現在の黄色を主体としたカラーからブルーとシルバーに変わる。現在も一部の駅で駅名を記した標識が黄色から青へと変わっている。
利用者にとって嬉しいことに、列車のアップグレードによって運賃が値上がりすることは景気にもよるだろうが5年はないそうだ。
PRASAはアップグレードのために1230億ランド(約1兆1800億円)を今後20年にわたって投資、さらに今年の11月5日にはフランスの会社と739億ランド(約7100億円)でアップグレードへの協力に合意した。2014年には新しい列車が南アフリカを走る予定だ。
(TechinsightJapan編集部 FLYNN)