マダガスカル政府は11月28日、牛泥棒グループの取り締まり強化に乗じて虐待を行っている治安部隊がいることを正式に認めた。この発表は政府と国連による共同調査によって判明したものだ。
この発表の1週間前、アムネスティ・インターナショナルはマダガスカルの軍隊に対して「マダガスカル南部の村から牛泥棒を暴き出すために2か月間行われた軍事行動にて、子供、高齢者、身障者を含む村人を無差別に何十人も殺害した」と指弾した。そして今回の国連との共同調査の結果、実際に行われていることをマダガスカル政府サイドが認めた。
目撃者が人権グループに話した内容によると、政府の治安部隊は怪しいと思う人物をその場で次々と殺害していったという。その中には身障者もいれば、容疑者の親や妻も含まれていた。このような襲撃によって、ある村では100戸以上の家が破壊され、6歳の子供を含む11人が殺害された。
ロンドンを拠点とする人権グループは、地域の治安という名の暴力は2013年5月に予定されている大統領選を考慮しての行動ではないかと懸念している。しかし、この治安部隊の行動には理由があった。
マダガスカル内で頻発している牛泥棒は、若い男性が動物を盗むことで男らしさをアピール、親戚から賞賛を勝ち取るという慣習から派生し、過激化したものと推測されている。
今年に入ってからその傾向は強くなり、6月には4つの村で一晩に67頭の牛が殺害される事件や、村人12人が泥棒に襲撃され全100頭のうち98頭が盗まれる事件が発生。牛泥棒の襲撃に対抗しようと村人や警察が応酬し、泥棒6人を含む9人が死亡するという事件も起こった。さらに今年9月には牛泥棒の襲来に地域の村人が大人数で反撃、60人もの牛泥棒を殺害したといわれている。村人の怒りが頂点に達し、政府は沈静化を図るため動き出したのだが、その政府の行動も過激だったようだ。
(TechinsightJapan編集部 FLYNN)