北野武が、監督・脚本などを手がけた最新作『アウトレイジ ビヨンド』が現在公開中である。公開後初の全国週末興行成績では、見事1位にランクインし、出だし絶好調の注目映画だ。本作でも前作に続き“北野映画”の真骨頂とも言える強烈なバイオレンス描写でヤクザの世界をリアルに描ききった北野監督であるが、前作『アウトレイジ』の台本執筆に至ったきっかけは、意外や意外。なんともお茶目な理由があったそうだ。
ラジオ番組『たまむすび』(TBSラジオ)では、北野監督がインタビュー出演し、同日に番組に出演したオフィス北野所属の芸人、近藤夢が北野の運転手をしていたときのエピソードを披露した。
近藤が運転する車に北野を乗せ、銀座を走っていた時のこと。文房具店にふらりと入って行った北野。店員が「22,000円」と「8,000円」の2本のボールペンをショーケースから出して薦めてきたので、北野は言われるがまま購入することに。だが、いざ“お会計”となって「220,000円」と「80,000円」という価格に驚いてしまった。そう、“ゼロ”1つ見間違えていたのだ。しかし、引くに引けなくなってしまい、そのまま購入することにしたという。
予想外の合計30万円という出費に落ち込んだ北野は、「なぜ、買ってしまったんだ」と車内でも落ち込み、その日の予定をキャンセルし、そのまま帰宅したのだという。家に着いてもまだ落ち込んでいた北野は、苦笑いしながら「このペンで台本を書いて100万円稼いでやる」と言い放ったという。そして翌日、近藤が北野宅に迎えに行くと、5冊程の大学ノートが放ってあり、照れくさそうに「書いたよ、台本」と言ったというのだ。なんとそれが、前作『アウトレイジ』の台本だ。その際すでに『~ビヨンド』も頭の中にあったというのだから、合計30万円のボールペン代の元は十分に取れたようだ。
『アウトレイジ』が、天才・北野武監督の頭から生まれ出たきっかけは、価格の見間違いという「失敗」から。実に人間臭く、またその人間臭さが映画の雰囲気にも通じるものがあり、北野監督らしいエピソードのように思える。
(TechinsightJapan編集部 佐々木直まる)