ホイットニー・ヒューストン(享年48)の急死という衝撃を、音楽界が受け止めきれないまま迎えた第54回グラミー賞授賞式。「音楽の祭典」ならではのフェスティビティは例年通り感じられたものの、予測通りホイットニーの死が影を落とし、追悼ムードにあふれる授賞式となった。
12日夜、ロサンゼルスの『ステイプルズ・センター』で開かれた第54回グラミー賞は、冒頭で「ボス」ことブルース・スプリングスティーン(62)が新曲『We Take Care of Our Own』を、景気良く歌って幕を開けた。しかし、すぐに黒のタキシードに黒の帽子を身につけた司会のLL・クール・J(44)が現れ、神妙な調子で開口一番「われわれの音楽ファミリーの一員が亡くなった。」と、ホイットニーの死について語り始めた。
そこで彼が「彼女のための祈りでこの式を始めるのが正しいことだ。」と言うと、観客席全員が拍手で同意。LL・クール・Jが「神よ、ホイットニーという偉大なシスターを我々に与えてくれてありがとう。」、「彼女は早世しすぎたけれど、彼女の美しい精神に触れ、その音楽というレガシーを皆で愛しシェアできたことは、この上ない祝福だった。」と用意した祈りの言葉を読み上げ、観客席全員が静かに黙祷を捧げた。
その後、画面には94年にホイットニーがグラミー賞授賞式でパフォーマンスした『I Will Always Love You』のビデオクリップが流れ、「ホイットニーの命を祝い、忘れないでいよう。」と呼びかけられた。会場内はスタンディングオベーションに包まれ、LL・クール・Jが「Whitney, we will always love you」と締めくくった。
授賞式ではまた、エイミー・ワインハウスら昨年亡くなったアーティスト達を偲ぶセグメントが放映されたが、最後にホイットニーの顔写真が紹介されると、舞台には黒いドレスに黒い巻髪という、ホイットニーを彷彿とさせる姿のジェニファー・ハドソン(30)が登場。『I Will Always Love You』をピアノの伴奏だけでしっとりと熱唱し、最後のフレーズを「Whitney, we love you」と置き換えて歌って、再び場内をスタンディングオベーションに誘った。
ジェニファーによるトリビュートは、ホイットニーが亡くなってから大急ぎで企画されたものだという。当初はジェニファーに加えて、ホイットニーが以前バックコーラスを務めていた「R&Bの女王」ことチャカ・カーン(58)が『I’m Every Woman』を歌うことになっていたが、本人の「今パフォーマンスするのは適切ではない。彼女と家族のために静かに祈りたい。」との意向で、急遽取り止めになった。『Us Weekly』誌によると、ジェニファーもかなりホイットニーの死にショックを受けており、リハーサルの際には涙が止まらなくなって、何度も曲をリスタートしなければならなかったそうだ。
その他の授賞式では「ショウ・マスト・ゴー・オン」というフレーズの通り、通常の祭典モードが見られた。リアーナ、ブルーノ・マース、アリシア・キーズやスティーヴィー・ワンダーら、数々のアーティストが壇上でホイットニーへの追悼の言葉を口にしていたものの、ホイットニーへの追悼ムードは、その死因もまだ明らかになっていないということもあり、業界全体がショック状態に陥っていることもあって、ミニマムなものにとどまったようだ。
今回、何と言っても話題を独占したのは、英歌姫のアデル(23)。昨年末の喉の手術からの復帰後、初めてとなるパフォーマンスで『Rolling in the Deep』を披露し、喝采を浴びていた。彼女は最優秀レコード賞やアルバム賞などノミネートされていた最多6部門を制覇し、「今年は、人生を変えるような年になった。」と涙を浮かべながら語っていた。
(TechinsightJapan編集部 ブローン菜美)