先週行われた裁判の結果、男性は家を出て行かなければならなくなった。なぜなら彼のご近所は、南アフリカ大統領をはじめとする高級官僚方だったからだ。
12月5日の現地新聞によると、先週の最高裁で南アフリカ公共事業省が男性の家の所有権を得ることとなった。つまり、男性は家を売って出て行かなければならないのだ。男性の名はアブーベイカー氏で、彼の家は大統領邸宅や高級官僚の家々が並ぶ政府所有の警備万全なブリンティリオン・エステートというエリアにあった。
この地域は1993年に売却されるまで政府所有であったが、アパルトヘイト終了後土地が売りに出されていたため、1997年にアブーベイカー氏がオフィスとして購入した。この時点でも政府使用のエリアではあったようだ。しかし、アブーベイカー氏の会社がプレトリア州議会から「ゲストハウスとして利用するなら」という条件で許可され、2004年アブーベイカー氏は2000万ランド(当時の日本円で3億5000万円以上)を銀行から融資してもらい家を建てた。
そのうち、政府はこの土地を取り戻したくなった。大統領邸など政府関連の家の安全面で、問題があるからというのが理由である。安全を確保するためにブリンティリオン・エステート全域に非常線を張りたいが、アブーベイカー氏の家が妨げになっていた。公共事業省によると、アブーベイカー氏の家がエステートの入り口にあるので、そこに監視装置などを設置してエステートに出入りする車両などのモニターチェックに利用したいというのだ。さらに侵入者のチェック、テロ行為の妨害などにもアブーベイカー氏の土地は非常に有効だという。
2005年9月、公共事業省はアブーベイカー氏に市場価格で買い取りたいと話し、さらに2008年1月には760万ランド(当時の日本円で約9900万円)での土地売却を持ちかけた。しかし、アブーベイカー氏はこれを拒否。そこで昨年10月、最高裁はアブーベイカー氏が所有権取り消しを阻止することを却下、先週の裁判でアブーベイカー氏の要求は棄却され、彼は家を売って出て行かなくてはならなくなった。裁判官は「所有権の取り上げは公共の目的のためであり、安全上やむ終えない措置である」と述べている。今後は、アブーベイカー氏がいくらで家を売るのかという点だけが注目されることとなる。
(TechinsightJapan編集部 近藤仁美)