南アフリカで生まれたポルトガル料理ファーストフード店『ナンドス(Nando’s)』。ペリペリチキンなどスパイシーな味付けで人気があり、今では全国展開されている。しかし、南アフリカで最近放送されたナンドスのCMが、大きな波紋を呼んだ。
新CMのテーマは「ラスト・マン・スタンディング(最強の男)」から取った、「ラスト・ディクテーター・スタンディング」…「最後まで残ってしまった独裁者」といったところだろうか。
最後の独裁者というのは、ジンバブエのロバート・ムガベ大統領。CMは、クリスマスの日に大きなパーティテーブルにひとりでぽつんと立ち、招待者たちの名前を見ているムガベ大統領が、昔懐かしい友人たちとの日々を思い出していくところから始まる。
まずはリビアの『友人』ガダフィ大佐と水鉄砲で遊ぶ姿。そしてイラク元大統領のサダム・フセインとビーチに寝転がり、手を大きく広げて動かしていわゆる「天使の羽」を作って遊ぶ2人。そしてアパルトヘイト時のピーター・ウィレム・ボータ大統領とブランコに乗って遊び、国民を30万人以上も虐殺したといわれているウガンダの独裁者イディ・アミンと、映画「タイタニック」のように抱き合っている姿(ただし船ではなく、戦車の上)。
彼らとの日々を思い出し、ムガベ大統領はさびしげに1人で座り込む。そして「ナンドスなら1人でも楽しめるセットがある」と、最新のセットメニューを紹介するというものである。
しかしこれが、大きな波紋を呼んだ。ジンバブエの過激派青年同盟が、ナンドスを利用するなというボイコットを行ったり、ナンドスの幹部が脅迫された。ジンバブエでは、ムガベ大統領を侮辱するというのは違法にあたるのだ。このため12月1日、ナンドスは「CMを流すことで、ナンドスの従業員や顧客の安全が脅かされるのであるならば、速やかに中止する。」とこの動きを重く受け止め、すぐに放送を中止した。
(TechinsightJapan編集部 近藤仁美)