南アフリカのポート・エリザベスにある、とある病院の『家族計画ユニット』の看護師が、小学校にやってきて少女たちに注射をした。その注射は、子宮内に精子が入ってきても受精をさせないためのいわゆる避妊用注射だった。
発覚したのは9月13日、注射をされたのは10~13歳の女子学生ら。11歳の娘の母親は「生理すら始まっていないうちの娘が、なぜこんな注射をしなければならないのか」と憤慨している。小学校6年生の女子の証言によると「病院の人が来て、生理やそれに伴う妊娠のしくみなどについて説明をした後、一人ずつ注射をした」そうだ。その後、学校側から親に、子供たちにバース・コントロールを注射したことを説明した。
バース・コントロールは南アフリカでは当たり前のように使用されている。たとえば、「これ以上子供がいると経済的に苦しい」、「妊娠したくない」というカップルは妊娠しないためにコンドーム以外の避妊具を利用する。たとえばホルモンバランスを調整するために毎日摂取するピルだけでなく、受精を防ぐ作用のある数ヶ月間効果のある注射、数年間効果のあるT字型の銅製避妊具なども用いる。しかし、いずれも当人と医師との診断の上で利用されるべきものであり、レイプされても妊娠しないようになどという対策で利用するものでもない。
この情報を得たポート・エリザベスの教育省は学校の校長に質問、校長はバース・コントロールの注射を強要したことを否定している。婦人科の医師は「この年齢の女子にバース・コントロールの注射をすると思春期に起こる生理的作用が遅くなり、『全くもって非倫理的行為』である」と述べている。
12歳以下の子供が生殖機能に関する医療行為を受ける場合、必ず親の承諾が必要となるが、今回は親は事後報告を受けている。
繰り返すようだが、本来バース・コントロールとは、レイプ被害による望まない妊娠を防ぐために行うものではないという。あくまでも自立したカップルの家族計画のために使われる手段である。レイプやHIVが氾濫している南アフリカとはいえ、10歳から、しかも親の同意なく注射をするのは間違っているだろう。学校側に大いに問題があるようだ。
(TechinsightJapan編集部 近藤仁美)