南アフリカの科学捜査研究所はてんやわんやだ。毒物・薬物検査、アルコールテストなどの未検査サンプルがなんと6万6000件以上もあることが判明した。
8月28日、保健省によると今年の7月末の時点で、1万5000件の毒物・薬物検査、3万7000件の飲酒運転検査、1万4500件の検死におけるアルコール検査、総計6万6500件の検査が手付かずの状態であることが判明している。また毒物・薬物検査1万5000件だけを見ても、検査が全て終了するのはケープタウン、プレトリアで5年、ヨハネスブルグでは6年はかかる見込みだという。
つまり、それ以上の裁判ケースが忘却されているということになる。さらには、被告、もしかしたら無実の被告までもが裁判で判決が出るのを待っていることにもなる。息子を毒殺された母親は、警察から5~10年は待たなければならないといわれて憤慨している。「そんな遅くに結果がでて、それから犯人を見つけることができるのか?」警察は回答してくれなかったそうだ。
なぜこれほどまでに検査が遅いのか?事件の発生率が多いことだけが理由ではなく、科捜研のスタッフが不足していることが最大の要因だ。特別俸給があるといわれながら、払われることもないのでスタッフのモラルが低くなっているらしい。追い討ちをかけるように、3都市のうち、2都市で科捜研の改築工事が行われている。
ケープタウンのある運動家は、この科捜研の検査の遅さに対して「あらゆる国の人が、南アフリカへやってきて殺人を犯すことができるとアピールをしているようなものだ。なにしろ、犯罪者は検査結果が出るまでは自由なのだから。」と述べている。
保安研究機関(ISS)の研究者は、この状況をありえないとし、保健省は緊急に対策を考慮すべきであり、死亡事件に関する検査は優先させるべきと忠告している。
保健省は、最近入手した薬物検査の時間をぐんと減らす最新機器が、この問題を解決する一端となる見込みだという展望を持っているようだ。
しかし、この膨大な数字は、未だ捕まらない犯罪者に余裕を与えるのではないだろうか?犯罪が増加するのはそういった警察側の隙が大きな要因のようだ。
(TechinsightJapan編集部 近藤仁美)