山田洋次監督が映画「武士の一分」で主演した木村拓哉との思い出をテレビ番組で語った。木村拓哉の現場での仕事への取り組み方には監督もスタッフも驚かされたという。
映画「武士の一分」(2006年)は山田洋次監督の時代劇映画の代表作として知られる。当時は日本アカデミー賞13部門中の12部門にノミネートされたことも話題となった。主演が木村拓哉で妻役のヒロインが人気上昇中の檀れいだったことも注目されたが、何より彼らの演技の素晴らしさが高く評価されたのだ。
それからおよそ4年半が過ぎた今年の8月5日に放送されたテレビ『僕らの音楽』に山田洋次監督が出演してSMAPの香取慎吾と対談した。香取は映画『こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE ~勝どき橋を封鎖せよ!~』で両津勘吉を演じており、葛飾柴又に縁があることから『男はつらいよ』の山田監督と対談が実現したのである。
香取は早速、監督に木村拓哉との思い出を尋ねた。山田監督は穏やかに「彼は仕事に真摯に取り組むのが印象的だったね」と語りだした。映画の撮影では本人が登場するシーンが終わると「忙しい場合は映らない役者は、はけることが多い」と監督は内情を明かした。SMAPでもある木村拓哉はその忙しい役者の典型のようなものだろう。しかし「彼はどんな時も帰らなかった」と言うのだ。
監督だけでなく「撮影スタッフもみんなビックリした」のが木村が演じる三村新之丞と檀れい演じる妻の加世とのシーン撮影中の出来事だ。2人が会話を交わして、新之丞は立ち上がると隣の部屋へ移動してふすまを閉める。その後は妻が1人でふすまごしの夫に話しかけるという場面が続く。つまり、ふすまの向こうにいる夫(木村)は映らない。監督が「おつかれさまだよ」と木村にはけても良いと声をかけると「でも、ふすまの向こうにいるんでしょ。ここにいます」と彼は帰ることなくずっと残っていたのだ。
山田監督はその様子を思い出すと「僕がもっと若ければ、あのような友達をもてればいいな…」と照れたように微笑んだ。木村拓哉に対する監督の思いの強さを感じて香取慎吾は「同じSMAPとしてとても嬉しいです」と感激していた。
この後、山田洋次監督は渥美清との思い出を語り『寅さんと両津勘吉にはどこか似たところがある』と香取に話して聞かせた。香取慎吾も自分が演じる両津勘吉があの「フーテンの寅さん」に例えられて嬉しそうだった。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)