4月23日に『ヤング ブラック・ジャック』(日テレ系)が放送された。かつて何度も実写ドラマ化された手塚治虫の代表作の一つである『ブラック・ジャック』だ。なぜ今?と疑問を抱きつつ見たのだが、最後まで解決されることはなかった。
天才医師でありながら無免許で患者から高額な報酬を請求するブラック・ジャックの大学生時代をオリジナルストーリーで描いた今回のドラマ。根強い原作ファンのいる作品を実写化するだけでも難しいのに、その原作で明確に描かれていない重要な過去をオリジナルストーリーで制作する勇気は素晴らしいと思う。だが、その熱意は少し空回りしてしまったようだ。
若かりしブラック・ジャックを演じるのは、映画『重力ピエロ』や『告白』など話題作に出演している岡田将生だ。数々の話題作に出演している彼だがお茶の間の知名度はまだそんなに高くない。そんな彼がSPドラマの主演を張るには早く感じられた。加えて特に日テレドラマの常連というわけでもない彼が今回抜擢されたことも不思議だった。
そしてヒロイン・八坂優奈役に『ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲』でゼブラクイーンを演じた仲里依紗を起用するも、彼女に普通の女子を演じさせてもなんの魅力も感じなかった。役ごとに顔の印象が変わる彼女だけに、今回も途中まで全く気づかなかった。それほどオーラが無かったのだが、彼女は一癖も二癖もあるキャラクターでなければ、その魅力を発揮出来ないことが露呈しただけとなった。
その優奈との関係も恋愛に発展するわけでも、敵対するわけでもなく、終始平行線。この2人の距離感、優奈の存在も微妙なものであった。
ブラック・ジャックの重要な過去というストーリーに気を取られすぎて、キャラクターや細かい設定を作りきれないまま勢いで作ってしまった感が否めない。そのため、あのブラック・ジャックの過去であることを忘れてしまうほどだった。それに気付いたからか、今回重要な患者である優奈の妹・渚(波瑠)が描いた絵本にブラック・ジャックとピノコを描くなど原作をチラつかせていた。こちらもそれを見て「やっぱりあの『ブラック・ジャック』なんだな」と思い出すこととなった。そのくらい原作との関連性が希薄に感じられた。
そして最後は、先日の『熱中時代』ほどではないが意味深なシーンで終わる。そこで一つ感じたのだが、日テレはこのSPドラマを次の連ドラ品評会にしているのだろうか。こんなに立て続けに続編をほのめかす終わり方をするSPドラマを見ると、そんな気がしてきてしまう。確かにSPドラマでの放送で反響が良ければそのまま続きを作りやすくなる。SPでの前評判があれば宣伝もしやすく、話題も作りやすくなるだろう。視聴者は知らず知らずの内に審査員となり、日テレの連ドラ企画会議に参加させられているのかもしれない。それならば、視聴者参加型の企画としてやってしまえば良さそうなものだが。
果たして、このSPドラマは昨今のドラマ低迷時代から脱却すべくして絞り出された日テレの奇策なのか。この結果は今後の予定が発表されれば分かることである。とりあえずそれまではスタートが決定しているドラマを見ながら、この二作品の行方を楽しみにするとしよう。
(TechinsightJapan編集部 洋梨りんご)