500億ランド・・・日本円およそ6000億円。これは1年間で南アフリカ人がセキュリティ会社に払っている総額だと民間のセキュリティ産業取締り機関が発表した。ワールドカップ中、犯罪件数は非常に低かったため、南アフリカは安全というイメージをもったかもしれない。しかし、南アフリカ人は安心をお金で買っているのだ。

南アフリカで最も面積が小さいのはハウテン州だが、ヨハネスブルグやプレトリアといった大都市兼犯罪都市がある。実は500億ランドの80％はこの州から出ている。ハウテン州にある（会社登録されている）セキュリティ会社は、最も多く2667件もあり、2位のクワズール・ナタール州（982件）を大きく上回っている。またハウテン州でもエリアによってセキュリティ会社は偏っており、1つの会社でカバーされているエリアもあれば、ヨハネスブルグの中心地のように269社が密集しているところもある。

ヨハネスブルグの高級住宅街では、1社のセキュリティ会社に12万ランド（日本円約142万円）を払ってパトロールの強化をしている地域もあるそうだ。さて一体、12万ランドでどれほどの安全を買えるのだろうか？

住宅エリアに2人の武装したガードマンが、装備された大型車に乗って24時間エリアをパトロール、車の上からライトで周りを照らし、道を歩いている不審者にはことごとく質問をしていくというもの。

このエリアに住むテリーザさんは、セキュリティ会社と契約をしてから心に平穏が宿ったという。「1つの会社に毎月多額のお金を払っているが、払うだけの価値はある。このエリアは安全ではないけど、セキュリティ会社が見張っていると思うことで心が安らぐ」そうだ。

それだけではなく、彼女の家には鍵を二重にするのは当たり前、電気の流れているフェンスや先の尖ったフェンス、ドアには侵入者防止のための鉄製格子戸など様々な予防策を取っている。この町に住んで3年になる彼女は、何度も恐ろしい目に遭っているそうだ。強盗や強盗未遂は何回もあり、車上荒らしや車を盗もうとされる被害にも遭っている。

「去年は家に4人の強盗が門を壊して入ってきて、私たちを縛って物を盗んでいったわ。あれは恐ろしかった。」と述べ、「警察は本当に役立たず」だと憤った。警察は緊急の電話をしても来ないかものすごく遅く来るかのどちらかだそうだ。その点、民間のセキュリティ会社は高い契約料を払っているだけあって、到着も早く、対応も迅速かつ行き届いている。

今回の調査によると、セキュリティ会社産業全体の輸送手段は、警察の3万7千台に比べ、およそ8万台とはるかに多い。また、警察は給料も安く待遇も悪いが、セキュリティ会社はそれなりに給料も高く、その分やり甲斐を感じてよく働いてくれるというメリットもある。警察からセキュリティ会社に転職する人も少なくないそうだ。

ヨハネスブルグほどではないが、南アフリカの家にはたいてい電気の流れているフェンスや鉄製格子戸があり、それら予防策のない家はそれだけで泥棒の格好の餌食となる。この国での安全は、お金をかけるだけの価値がある。
（TechinsightJapan編集部　近藤仁美）