極右白人至上主義団体「アフリカーナー抵抗運動(Afrikaans Resistance Movement:AWB)」の党首ユージン・テレブランシュ殺害で、南アフリカは水面下でくすぶっていた人種差別が再燃しはじめている。特に問題となっているのは、ある政治家が歌う人種差別的な歌。この歌が殺人を引き起こしたともいわれている。
一部では単なる賃金の問題による殺人事件といわれているが、先日被疑者が裁判所に送られたときの緊迫感は単なる殺人事件とは思えない状況だった。
裁判所の外では何百人という人々が黒人と白人に別れ、黒人は現在の南アフリカの国家を、白人はアパルトヘイト時代の国家を歌い挑発し合っていた。興奮した白人女性が黒人たちのいる場所へ水をかけるなど一時は騒然となったが、警察の人海戦術によってけが人などは出なかった。
また、AWBのスポークスマンが報道番組に出演した際には、黒人女性との話し合いに興奮しマイクを放り投げて退出するという醜態が放送された。女性は農場で働く黒人労働者が未だに法律で定められた賃金以下で働いていること、その賃金に文句を言うと解雇されてしまうので仕方なく働いている労働者が多いことなどを指摘していた。(AWBのメンバーの多くは農場を経営している。)
テレブランシュ殺害は政治的なかかわりはないといわれているが、ある一つの歌が農場経営者殺害を焚きつけたとしてその歌を歌って非難を浴びている政治家がいる。
ANC青年同盟の議長ジュリウス・マレマ(Julius Malema)29歳だ。彼は行く先々で”Shoot the Boer”という歌を歌う。これはボーア人(アフリカーンス語で農場経営者、主に白人)を殺せという内容で、アパルトヘイト最終期にANC(現与党アフリカ民族会議)によって歌われていた過激な内容の歌。この歌は裁判で歌うことが禁じられており、この歌が今回の殺人を誘発したとしてAWBが強く批判している。ANCですらマレマにこの歌を歌うなと警告していた。
テレブランシュの葬儀は今週の金曜日。緊張はさらに高まっている。
(TechinsightJapan編集部 近藤仁美)