南アフリカにとって記念すべき日が2月11日、20年前のこの日ネルソン・マンデラが刑務所から解放された日だ。テレビではネルソン･マンデラが元妻と共に手をつないで刑務所の門を出てくるシーンを繰り返し流していた。

1990年2月11日、ANC党首ネルソン･マンデラが、ロベン・アイランドなどの刑務所を計27年間にわたって収容され、最後の刑務所ケープタウン北部にあるドラッケンステイン刑務所（Drakenstein Prison　元ビクター・フェルスター刑務所）から出てきた。何千人という人々が彼の出てくる姿を見て涙した。

20年経った2010年の同じ日、与党のANC政治家などがドラッケンステイン刑務所に集まりお茶と朝食をとり、20年前にマンデラがしたように刑務所のゲートから勇んで出てきた。ゲートの外でも多くの人々が集まり祝福していた。当初、マンデラは車でゲートから出てくる予定だったが、自身の意向で歩いて出てきたという逸話がある。「マンデラが解放された日、われわれも解放された」「人々に自由を与えてくれた旅の最初の一歩となった記念すべき日だ」と政治家たちは当時の喜びを思い出す。

マンデラを収容していた側の人間もマンデラの人柄に魅せられていた。彼らは2月11日の日曜日早朝、刑務所長からマンデラが解放されることを告げられ至急その準備に取り掛かったそうだ。「一番大事なことは刑務所内に外部の人間を侵入させないことだった。」と語るのは当時の刑務官の1人ギリンガムさん。彼はマンデラの出所手続きを行った人物だ。手続きがすべて終わった後、マンデラは家族とのひと時を過ごし、刑務所のスタッフ一人一人と握手を交わしたそうだ。「マンデラは『Higher than Hope』という活動家の本をくれた。刑務所内でもマンデラは親切で優しい人物だった。出所を知った瞬間から、南アフリカという国が新しい方向へ向かうことを感じ取った」そうだ。

マンデラが国民のシンボルとなっている反面、現大統領のジェイコブ・ズマはドラッケンステイン刑務所にも行かず、マンデラが見守る2月11日に行われた議会でも冴えない党首発言。マンデラを超える政治家は今後現れるのだろうか。
（TechinsightJapan編集部　近藤仁美）