writer : techinsight

【名盤クロニクル】圧倒的な構成力の神品 イエス「イエスソングズ」

(画像提供:AMazon.co.jp)

(ジャンル:ロック)
かつて山下達郎がプログレッシブロックを評して、5分で終わる曲を15分も引き延ばすような音楽は好きになれないと発言していた。
そして、残念ながら多くのプログレッシブロック(そして一部のジャズも)には、楽曲の長さに必然性の感じられないものが多いというのは事実である。
しかし、演奏時間20分の大曲でありながら、その圧倒的なアンサンブルの妙技と構成力で、「なるほどこの曲は20分という時間が必要だったのだ」と納得させるに十分な曲がイエスの「危機(Close to the edge)」である。

この曲は、初演の同名アルバムで演奏されたアレンジによって繰り返しライブで完璧に再現され、アドリブソロや新アレンジといったことが許されない、まさに芸術品の域に達した楽曲である。

楽曲を聴き終えたときには、クラシックの交響曲を聴き終えたときのような、壮大なカタルシスをもたらしてくれる。

活動歴40年を超えるイエスの演奏史の中で、今回紹介するライブアルバム「イエスソングズ」に収録された「危機」「同志」「ユアズ・イズ・ノー・ディスグレイス」「ラウンドアバウト」などが、今でもステージのメイン楽曲になっていることを考えると、イエスの完成形はすでにこのアルバムでなされたと言ってもよいだろう。

イエスは、80年代に大きく衣替えして「ロンリーハート」のようなヒット曲を出しており、イエス音楽の鑑賞は、さまざまな視点から行えるが、原点はやはりこのアルバムにあると言ってよいだろう。

芸術的で大規模編成によるロックを演奏しているマイク・オールドフィールドも、プログレッシブロックとしては非常に素晴らしいが、楽想の提示と発展という点でイエスの「危機」に及ぶところではない。

ロック史上に燦然と輝く名曲を、メンバーが若くて勢いのあった絶頂期の演奏で堪能できる名盤である。

ロジャーディーンの描くインナースリーブのイラストも非常に素晴らしくトータルな芸術作品として長く記憶にとどめられるべきであろう。

(収録曲)

ディスク:1
1. Opening [Excerpt from “Firebird Suite”]
2. Siberian Khatru
3. Heart of the Sunrise
4. Perpetual Change
5. And You and I: Cord of Life/Eclipse/The Preacher the Teacher/The …
6. Mood for a Day
7. Excerpts from “The Six Wives of Henry VIII” [Excerpt]
8. Roundabout
ディスク:2
1. I’ve Seen All Good People: Your Move/All Good People
2. Long Distance Runaround/The Fish (Schindleria Praematurus)
3. Close to the Edge: The Solid Time of Change/Total Mass Retain/I Get Up
4. Yours Is No Disgrace
5. Starship Trooper: Life Seeker/Disillusion/Worm
(TechinsightJapan編集部 真田 裕一)