writer : techinsight

【3分でわかる】オレンジチョコレート

 今日2月14日はバレンタインデー。せっかくなので漫画でもチョコレートをと「失恋ショコラティエ」を紹介したが、やや重かったかもしれない。今日は肩の力を抜いて楽しめる「オレンジチョコレート」をどうぞ。

 「呼水千尋」(ちろ)は美少女だけどちょっぴりおバカな中学3年生。小さな頃から何でもできるひとつ上の幼馴染「姫野律」に憧れを抱いていた。

 日舞の家元を父に持つ律は16歳にして名取という天才少年。さらには“おいらん王子”の異名を持つ人気女形タレントとして多忙な日々を送っているが、周囲の期待を重荷と感じている。それを知るちろは常々律の負担を軽くしたいと思っており、純粋な憧れもあって律と替わりたい、律になりたいと願っていた。

 いつもの神社でそんな話をし、うたた寝をするふたり。ところが目を覚ますと、ふたりの心が入れ替わってしまっていた。パニックになる律、相変わらずのんきなちろ。何の解決策もないままそれぞれ自宅で一夜を過ごすと、何事もなかったように元に戻っている。

 慎重な律は、その後もしばらくちろと行動を共にすることに。するとよりにもよって、律の仕事中に入れ替わってしまった!日舞を習ってはいるものの筋がいいとは言えないちろは、天才女形として振舞うことができるのか。

 いわゆる入れ替わりものである。漫画で幼馴染同士の入れ替わりとなればラブコメと相場が決まっているが、この作品ではふたりの成長に重きが置かれているようだ。

 とろくさいが何事も一生懸命なちろと、一見完璧で人を寄せ付けない雰囲気の律が、互いの体に入ることで新しい世界を知っていく。その過程で読者は、ちろが律に憧れている以上に律もちろに対し同じ感情を抱いていることを知るのだ。

 もちろん恋愛の要素も。現在発行されているコミックス2巻までのところ、律の方がちろに想いを寄せているような描写がいくつかある。屈託のないちろに比べて抑圧の多い律の裏側が先に明らかになっていくのは当然であるとして、気になるのはこの先ちろの想いがいかにして描かれるか。純真無垢なちろをどう掘り下げていくかに作者・山田南平氏の手腕が問われる。

 山田氏といえば「123cmのダンディ」をはじめとする久美子&真吾シリーズを思い浮かべる人も多いのではないか。17歳の女子高生と10歳の少年のラブストーリーなのだが、真吾の可愛らしさは筆舌に尽くしがたいものがあった。キャラクター性は違えど、それがちろに受け継がれているような気がする。山田氏の描くちびっこは本当に、本当に愛くるしい。

 キャラクターの魅力が先行気味となっている感は否めないが、ストーリーが大きく動き出しそうなところでコミックス2巻は終了している。気になる人は別冊花とゆめをチェックしよう。
(TechinsightJapan編集部 三浦ヨーコ)