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いまからおよそ2ヶ月前の9月13日、早朝の銀座に長蛇の列が出来たという報道をご記憶だろうか。列をなした人々が目指した先はこの日、日本に初上陸した世界第3位の衣料専門店「H&M」(へネス・アンド・モーリッツ)。多くのマスコミがこぞってこのニュースをとりあげ、天候が悪い中、銀座店オープン時には1000~3000人が並んだとも報じられた。これらの報道に対し、敏感に反応を示した国内アパレルメーカーは多いはずだ。そのなかでももっとも危機感を募らせているであろうと思われるのは、そうユニクロだ。
未だ連日多くのお客でごった返す「H&M」銀座店。11月8日には原宿に2号店もオープンしたばかり。原宿には「ギャップ」「ザラ」等があり、同じ明治通りに沿いにはラフォーレ原宿がある。そこには先月、英国人気ブランド「TOPSHOP/TOPMAN」が日本初の大型コンセプトストアをオープンさせたばかりだ。これらのブランドは低価格で衣料品を提供するので、「ファストファッション」と呼ばれ、ひとくくりにされがちだ。日本では「ユニクロ」がその代表。これら海外のファストファッションが国内に続々と上陸を始めることにより、日本の市場でファストファッションの戦争の火蓋が切られた。これに対し、「ユニクロ」はどのような対策をとるのだろうか。
H&Mとは、スウェーデンに本社を置くアパレル企業。アパレル以外にコスメも扱っている。世界進出は約30カ国、1600以上の店舗を所有しているといわれている。「世界第3位」と言われるほどなのだから、企業としても優秀。2007年度の売上げは日本円にして1兆3700億円、14.5%増。2006年度は1兆3614億円、純利益率は13.5%で、当時は世界第2位だった。07年度の第一位は「ザラ」で第二位は「ギャップ」。この背景にはザラが海外進出の拡大を推し進めたのと、アメリカの消費が低迷したことだ。06年度はギャップが一位。ザラは三位だった。
が、実はギャップもザラも子会社を含めた売上げであって、単独ブランドとしてはH&Mが06年度も07年度も一位だ。白熱するファストファッション企業の中で、高い売上げと利益をたたき出すH&M。他のブランドとは明らかに異なる特長がある。それは高いファッション性だ。
H&Mは低価格と言う意味で、ギャップやザラ等と同カテゴリーにされがちだが、ずば抜けたファッション性がある。それが他ブランドと区別されている大きな理由だ。モードをしっかりととらえ、コレクションで発表された新スタイルをビックメゾンよりも早く商品化する。その商品、企画のリードタイムは、3週間から6ヶ月と幅広く、これが利益と売上げを両立させている。店によっては一日に3回もディスプレイが変わることがあるらしい。
そして、特筆すべきは秀逸したプロモーション力。有名なセレブやデザイナーを起用したコラボレーション商品をつねに発信し続ける。もちろんこれらは限定品。さらに低価格だからすぐに売り切れる。それが話題になる。このマーケティング技術は希少価値を最大限に活用するハイブランドのマーケティングと同じ。今季のコラボはコム・デ・ギャルソンの川久保玲。ギャルソンの服が一万円以下で買えるのは魅力的だ。
このように飛ぶ鳥落とす勢いのH&Mだが、欠点もある。それは意外にも彼らの最大の武器であるトレンドを押さえたファッション性だ。なぜなら、トレンドの服は流行が廃れれば着れなくなる。しかも、低価格ゆえに、それに見合った素材しか使われていない。そのため、着用に耐えられるのはワンシーズンのみだ。H&Mの生産は欧州やアジア工場に委託している。しかも、約800社と分散しておりユニクロのような品質管理は期待できないと言った意見もある。品質としてはユニクロとH&Mは大差ないという意見もあるが、実際筆者が去年ドイツでH&Mのワンピースを見たとき、その生地のあまりの薄さに驚愕した。まだ、H&M日本上陸する前で、ネット販売では割高だったころだ。正直、こんなものに金を払おうとは思わなかった。しかし、着捨てるには十分だという意見もある。
一時期は低迷した日本のファストブランド「ユニクロ」だが最近、顧客が戻りつつある。消費低迷で軒並みアパレル企業が苦戦している中、2008年度の8月期の売上高は2.9%上昇している。今月の11月4日は既存店の売上高が前年度よりも下がったが、これには10月中旬以降の気温が高かったためだという指摘がある。この数週間、一気に気温が下がり、ユニクロが得意とするカラーバリエーションの豊富なフリースやカシミヤセーター、ヒートテックインナーが売れる環境が整い始めてきた。ユニクロとH&Mがもっとも異なる点。それはユニクロはなにより定番商品に力を注いでいるということだ。
「定番商品におしゃれ感が出てきている。」と最近のユニクロを評価する専門家も現れた。「ユニクロ」=「ダサい」と言う図式はもはや過去のものとなり、現在ではハイブランドを扱うファッション雑誌にもユニクロのジャケットや小物、セーターがチープ・シック商品として紹介されている。もちろん、最近ではファッション性を高める企画も進めている。有名なところでは「UT」だろう。これはデザインを公募したり、様々なレーベルやアニメとコラボしたりしている。先月その公募が終わり、最終審査は来春に行われる予定だ。
ユニクロの機能的なアンダーウェア「ヒートテック」の世界実証キャンペーンも面白い。
これはユニクロの「発熱 保湿ウェアヒートテック」を1000人の消費者や100人のメディアに体験キットを無料で配布し、着用感をWEBで伝える、ユーザー参加型企画だ。もちろんユニクロお得意の有名人CMもすごいことになっている。知花くららや、世界的に有名なアートディレクター、ステファン・ガンを起用し、テコ入れも忘れていない。
ユニクロは定番性と機能性で他社のファストブランドとの差別化を図ってきているが、今後本格的な世界進出を果たすためには、やはりファッション性を高める必要性がある。機能性と素材のよさ、そしてさらなるファッション性の追求。今後ユニクロが日本発のファストファッションブランドとして、世界マーケットを狙うときには、この三つの要素が鍵となるのは間違いない。