人間と犬は古くから絆を紡いできた間柄だ。しかし、なかには人間から虐待されたり捨てられたりして過酷な状況に置かれた犬もいる。だがそのような犬でも新たな飼い主に出会い、幸せを掴んだケースもある。そんなエピソードをいくつか紹介したい。
2023年年3月25日に英グレーター・マンチェスターで運河近くを散歩していた男性が、瀕死の状態で捨てられていた1匹のシーズー犬を発見した。この犬は当時、目がほとんど見えず、被毛が固まり体が重くて自由に動けず、その姿はまるでボロ布の山に見えたという。心痛めた男性はその犬を自宅に連れて帰ると、近所の動物病院を訪れた。そして獣医が英国動物虐待防止協会(RSPCA)に連絡し、スタッフが“モリス(Morris)”と名付けて引き取った。
モリスは緑内障で片目を失明し、もう一方は白内障でほとんど機能しておらず、のちに摘出手術が行われた。また1.3キロもあった汚れて固まった被毛の塊をきれいに剃るなどのケアを受けたモリスは次第に健康を取り戻し、数か月後には新しい飼い主が見つかったのだ。
飼い主になったジョセフィン・ニューホールさん(Josephine Newhall、82)はモリスに一目惚れだったそうで、「モリスは私にとって、楽しい時間を一緒に過ごせる仲間のような存在よ」と語る。今モリスには犬のガールフレンドもでき、テニスボールで遊ぶのが大好きだそうだ。ジョセフィンさんは「保護された時のことを考えると、今ここにいることは奇跡だと思っているわ」ともコメントしている。
また虐待されていた犬が新しい飼い主に出会い、徐々に心を開いていくケースもある。2015年10月6日、カリフォルニア州トレーシーにある一軒家で5頭の闘犬が地元警察によって救助され、飼い主のカップルが動物虐待の罪などで逮捕された。5頭はピットブル(またはピットブルのミックス)で極めて過酷な状況で飼育されており、救助の際は怯えて鳴き声を上げることすらなかったという。
約1年後にそのうちの攻撃性の低い1頭、オスの“スクービー(Scooby、推定~11歳)”の新しい飼い主が決まった。しかし闘犬だったスクービーは、それまで一度もしつけや訓練を受けたことがなく、リードを付けて散歩することを拒絶。また何かに怯えて震え出し、夜は悪夢にうなされてぐっすり眠ることはなかった。そして「傷つけられる」ことを恐れ、鳴き声を上げることも尻尾を振ることもなく、