缶詰、真空パック、瓶詰めの食品などは手軽で便利だが、加熱殺菌や保存の方法によっては命にかかわる感染症につながることもある。ブラジルの女性(47)は昨年1月、手製の瓶詰め食品から「ボツリヌス症」を発症し、今も後遺症に苦しんでいるという。テックインサイト編集部が取材した。
ブラジル在住のドラリシ・カルネイロ・ソブレイラさん(Doralice Carneiro Sobreira、47)は2021年12月31日、地元市場の馴染の店から自家製の瓶詰めペストを購入した。ペストとはイタリア料理で使われるペースト状のソースで、材料にはバジル、松の実、ニンニク、オリーブオイル、チーズなどが使われる。
ドラリシさんによると、瓶には保存方法の表示はなかったそうで、数日間は冷蔵庫入れず貯蔵室に置き、購入後22日目に蓋を開けて食べたという。
「ソースは賞味期限内で、見た目も色も香りもよく、とても美味しかった」と語るドラリシさん。しかし食事をした翌日は11時間連続で眠り続け、その後は呼吸が苦しくなって舌がしびれるような感覚に襲われ、病院に車を走らせたという。
ドラリシさんはその時のことをこう振り返る。
「病院までは20キロほどで、駐車場に車を停めた直後に突然、身体のコントロールができなくなったの。そこで車のドアから飛び出すと、近くで車椅子を押している病院のスタッフが見えたから大声で叫んだわ。そうして助けられたのよ。」
ところがドラリシさんはその後、嘔吐して呼吸困難に陥り、医師はCT検査を行った。また神経外科医はドラリシさんの身体が麻痺し、2本の足指以外動かせなくなっていることに気付き、検査の結果「ボツリヌス症(A型)」と診断された。
米ミネソタ州に本部がある総合病院「メイヨー・クリニック」のウェブサイトによると、ボツリヌス症はボツリヌス毒素による中毒であり、毒素を含む食品を食べたり、毒素に傷口が汚染された時に発症するという。毒素が産生された食品を摂取すると12時間~36時間で、口の渇き、吐き気、嘔吐、胃痛、視力障害、言語障害、えん下困難、麻痺などの症状が現れるのが特徴で、重症化すると命の危険がある。
そのため医師は、最後に食べたペストソースが原因であると判断し、直ちに抗毒素を投与して治療を開始した。しかしドラリシさんが退院できたのは、