彼は返却の際、名前や連絡先も書かずに出て行ってしまったそうだ。そして職員は、この本を図書館長のクリス・クライデンさん(Chris Kreiden)の机の上に置いた。
クライデンさんが本の状態を確認すると、ページの端が茶色に変色しており、擦り減っていたという。また革のような装丁もところどころ欠けており、バラバラになっていた。本の最後のページを開いたところ、返却期限を示す黒いスタンプが押されており、裏表紙に貼られた封筒には「2週間の貸出可能」と書かれていた。延滞料は一日あたり5セントだった。
さらにこの本には、創立当時の図書館の蔵書を特定するための登録番号が2つ付いていた。この番号は、館内では無料閲覧でき、貸し出し希望の際には月25セントを支払わなければならないという当時の図書館のオリジナルコレクションの一部であったことを意味している。クライデンさんによれば、2つ目の番号は1892年に市が図書館を引き継ぎ、目録を更新した時に付けられたものだという。
クライデンさんは、今回の本の返却について「貸し出してから5年が経過して本が返却されるケースはあったが、今回はこれまでで最も遅い返却でしょう」と話している。そんなクライデンさんは、本がどこで誰によって発見されたのかを知りたいと思い、カリフォルニア州セントヘレナのメディア『St. Helena Star』に電話した。すると地元のテレビ局がこの出来事を取り上げ、さらに全米のニュース番組でも報道された。
一方、ペリーさんはミネソタ州で家族の結婚式に出席した際、ホテルの部屋でローカルニュースを見ていたところ、自ら返却した本について取り上げられていることを知った。そこで延滞料のことに気づいたペリーさんは、家族に「困ったことになった」と話し、セントヘレナ公共図書館に電話をかけた。
幸いにも、図書館はすでに遅延料金の制度を廃止していたが、もし当時のままの制度であれば、ペリーさんは1700ドル(約23万7000円)以上の支払いが求められていたという。
その後、本は図書館の入り口近くの展示ケースに収められた。この本は過去の思い出を伝える特別な存在となっており、クライデンさんは「図書館の本を返すのに、遅すぎるということはありません」と述べている。
画像は『The Washington Post 2023年5月24日付「After nearly 100 years, a library book was returned」(St. Helena Public Library)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 H.R.)