「寝たきりとなった最愛の父に、どうしても自分の結婚式に出席してほしい」―そんな息子の願いが叶った。救急車が隊員付きで父を結婚式場へと送り、さらには挙式中ずっと付き添ってくれたのだ。この救急隊の温かい対応が大きな話題となり、南アフリカ現地『News24』をはじめ複数のメディアが伝えている。
南アフリカ・セッジフィールド(Sedgefield)に住むフリッキー・グロベラーさん(62歳)は、今年初めに運動ニューロン疾患と診断された。運動ニューロン疾患(MND)とは運動神経の障害で、筋萎縮と筋力低下がみられ、最終的に呼吸筋が動かなくなり死に至るケースが多い。診断当初は車椅子で移動していたフリッキーさんだったが、容態はみるみる悪化、今ではベッドに横たわりまったく動くことができなくなっていた。
フリッキーさんの末の息子ヤンドレさん(31)は実家から490キロほど離れたケープタウンで働いていたが、父を助けるため5か月前に仕事を辞め、両親のそばで暮らすことにした。父を最も慕っていたヤンドレさんにとって、徐々に弱っていくその姿を目にすることは非常に辛く、また「あとどれくらい父と一緒に過ごせるのか?」という焦りもあり、ガールフレンドのニコールさんとの結婚を早めることを決めた。
フリッキーさんの病状が日ごとに悪化していく中で、ヤンドレさんの結婚という出来事は沈みがちだった家族に一時の明るさを取り戻させた。しかしここで問題となったのは、どこで結婚式を挙げるか、どうすればフリッキーさんが結婚式に出席できるかということだった。その後、結婚式場はセッジフィールド市内にあるリゾートホテルに決まり、ヤンドレさんをはじめ家族は式場まで自分たちの車でフリッキーさんを運ぼうかと考えたが、フリッキーさんがこれに乗り気になることはなかった。一時はフリッキーさんの部屋で結婚式を挙げることも考えたが、妻となるニコールさんが「この日は私たちのためだから」とこれに反対。そこで、結婚式場まで救急車を借りることができるかと複数の会社に電話で問い合わせてみたが、いずれも予算をはるかに超える高額なものでヤンドレさんは絶望の淵にいた。
そんな中、