先頭車両の8号車と3号車に分かれて乗車していた。進興さんは最も被害の大きかった8号車におり、同車両にいた妻の王綠雲さん(64歳)、弟の董進發さん(65歳)、孫の董益良さん(9歳)と佳惠さん(12歳)、妹の董玉蘭さん(60歳)とその夫・何發仁さん(67歳)、姪の何青宴さん(36歳)、隣人の曾訓孺さん(69歳)が死亡、そのほか親戚や従業員の4人が重傷、1人が軽傷を負った。董進興さんは漁船の船長でもあり、台東の漁業界では名の知れた人物だったそうだ。妻の王綠雲さんも漁業組合の理事を務めるなど、漁師の権益保護のため夫婦で積極的に活動し、地元の人々から慕われていたという。
事故後、現地メディアの取材を受けたのは、進興さんの長女・董小羚さん(43歳)だ。小羚さんは現在高雄に住んでおり、結婚式の後に一行を駅で見送ると、一人高雄行きの新幹線に乗った。しかし高雄に着いたところで、三女である妹からの電話を受けたそうだ。三女は事故当時3号車に乗っており、横転した列車から自力で脱出したという。
小羚さんが三女から聞いた話では、列車は台北を出発してから3度停電のトラブルがあり、乗客らは顔を見合わせ不安を募らせていたそうだ。3回目の停電の後に列車が停止し、車両の異常を伝えるアナウンスが流れた。電気が復旧すると再び発車したが、宜蘭駅を出てまもなくすると突然加速、そして脱線したとのことだ。
「当初はこの列車に乗る予定ではなかった」と話す小羚さん。実は結婚式の後、すぐに台東へ帰ることになっていたそうだ。しかし進興さんが「せっかく遠出をしたのだから、もう一日遊んで行こう」と言い、急遽予定を変更したという。小羚さんは、「病院に来てみたら亡くなった18人のうちの半分が自分の身内だった。やりきれない」と泣き崩れ、慰問した蔡英文総統に一刻も早い事故原因の究明を求めた。
益良さんと佳惠さんの父親であり、進興さんの唯一の息子である董民海さんは結婚式に出席した後、別の用事のため中国に向かっており、列車には乗車していなかった。益良さんの遺体回収にあたった捜索隊員によれば、益良さんは恐怖に怯えた表情のまま亡くなっており、いたたまれずに「怖くないよ。家に帰ろうね」と何度も声をかけながら運んだという。両親と我が子を一度に失った民海さんは、スピードを上げた運転士の判断や、列車の異常を知りながら運行を続けさせた台湾鉄路の判断に疑問を感じずにはおられず、明確な説明を求めている。
画像は『聯合新聞網 2018年10月23日付「普悠瑪ATP關閉 轉彎超速 司機員聲押」(記者鄭超文/攝影)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 片倉愛)