他人の親切行為を知った人がさらに親切な行為に出て、地域社会に親切の連鎖が起こった。これから寒さが厳しくなる米フィラデルフィアから人々の心を温かくするニュースが届いた。米メディア『Philly.com』『FOX 29』『TODAY』などが伝えている。
フィラデルフィア西部に暮らす4児の父ブレノン・ジョーンズさん(29歳)は11年間理容師として働いていたが、ここ最近は仕事に充実感を得られずスタイリストとして生活していた。しかしある出来事がブレノンさんの生活を変えた。
今年の初め、ブレノンさんは路上で見かけたホームレスにバナナと2ドルを差し出した。ところが後になってもそのホームレスのことが頭から離れず、「自分はもっと何かできたのではないか…。そうだ、ヘアカットを提供しよう」と思いついた。そこで埃を被ってしばらく使っていなかったハサミを取り出し、街に飛び出した。
理容道具が入った箱を携え路上に小さな椅子と「ホームレスのためのヘアカットをします」と書かれた黒板を置き、フィラデルフィアの路上で「モバイル・サロン」を始めたブレノンさんはSNSに広告を出し、Facebookでヘアカットの様子をライブ配信した。すると噂はたちまち広がった。同州オゴンツで理髪店「Taper’s」を経営する理髪師ショーン・ジョンソンさん(44歳)は、ブレノンさんことを知り「うちの店で働かないか」と誘った。
ショーンさんはその昔、暴行罪で6年の懲役生活を経験していた。しかしその間に理容学校へ通い、母親の支援を得てライセンスを獲得、今の店をオープンさせた。現在はビジネスが成功し、自分の店の近くにもう1店舗を展開しようと2年前に不動産を購入したものの、そのままになっていた。
だがブレノンさんは、ホームレスの人たちのヘアカットを続けていきたいという強い思いがあったためにショーンさんの申し出を丁重に断り、路上で髪を切り続けた。そして先月のこと、再びショーンさんはブレノンさんを訪ねて「これから寒さが厳しくなるが、冬場はどうするんだ?」と聞いた。
ブレノンさんは正直、そこまで考えていなかった。するとショーンさんが「君に見せたいものがあるんだけど、一緒に来てくれないか」と言い、ある場所へと導いた。そこはショーンさんが店舗拡大を考えて購入し、改装を終えたばかりの店だった。