がん患者をサポートする慈善団体に属していながら、自らを「末期のがん」と偽った元ホッケー選手の女が逮捕・起訴された。2年にわたり「具合が悪くて働けない」と欠勤を繰り返しながら、がん患者遺族の寄付金から支払われる給料を騙し取り、医師による偽造書類まで作成していたのだ。世間からは「言語道断」と批判の声が噴出している。『The Sydney Morning Herald』『news.com.au』『BBC News』などが伝えた。
オーストラリアで女性ホッケーチームの元選手だったケイト・ハッブル(32歳)は、子供や若年層のがん患者とその家族のサポートおよびカウンセリングを行う慈善団体「Redkite(レッドカイト)」のチームコーディネーターとして2014年6月からパースの事務所で働き始めた。
ところが勤務して半年ほど経った頃、「自分はがんを患っている。来年の6月には治療を始めるので働けなくなる」と同僚らに告げた。この頃から欠勤や早退が増えるようになったケイトは2015年11月、パースにある病院「Sir Charles Gairdner Hospital」を騙った偽の手紙を上司に見せた。そこにはケイトが「2014年3月からこの病院の患者であること」「10月から10週間サイクルの化学療法を受けていること」などが記されていたという。その後ケイトは「シドニーの病院でさらに放射線治療を受けるため」とシドニーの事務所への転勤を願い出た。
そしてケイトは今年1月からシドニーの事務所で働き始めたが、仕事柄がんに関する知識や情報を持つスタッフらはケイトからその兆候が見られないことに疑問を抱く。しかし結果として、ケイトは2年以上も「Redkite」を騙し続けたのだ。
シドニーの「Redkite」から医療記録文書を提出するよう言われたケイトは、実在する医師の名を騙った手紙をたびたび偽造し、上司に「末期のがんで、余命僅かと言われた。自分にはもう選択肢が尽きてしまった」と告げている。3月17日には、携帯電話から友人のふりをして「今、ケイトは手術室にいて連絡できない状態だ。2回も心臓が止まり肋骨を骨折したようだ」とも伝えた。同時にケイト自らも「肝臓の一部を手術で摘出し、腎臓にできていた腫瘍も摘出した」と報告、その2日後には「膵臓にあった小さな腫瘍を取り除き、30秒ほど心臓が止まった後、4分ほど再び停止した」というメッセージを送るなど、「Redkite」に嘘に嘘を重ね「治療をしなければ、もって半年ほどだと思う」と述べていたという。