ナニーとして面倒を見ていた生後10か月の男児を死亡させたとして、34歳の女に対する判決がこのほど行われ、懲役4年が科せられたことを英『The Guardian』など複数メディアが伝えている。
ハンガリー出身のヴィクトリア・タウツ(34)は、小児応急処置の講習を受けた後、最初の仕事として英ロンドン北部ハーリンゲイで2014年6月からパール・ポールさんとナイマール・ヴィジャヤンさんの息子、ジョシュア君のベビーシッターをしていた。パールさんがその頃から仕事に復帰したため、ヴィクトリアが子供の面倒を任せられたという。
まだナニーとしての資格を取得していなかったヴィクトリアは、当時生後10か月だったジョシュア君の両親から、イギリスの最低賃金7.5ポンド(約1,060円)を遥かに下回る1時間3.6ポンド(約510円)の賃金で子守を依頼された。ヴィクトリアは、ジョシュア君が頭部に水が溜まるなど健康面に複数の問題があることから、パールさんからジョシュア君の世話に関して「食べなくなったり、嘔吐したり、意識がなくなったらすぐに病院に連れて行くこと」「その日の食欲を確認するために、息子が食べたお皿をそのままにしておくこと。昼寝の時間や便の状態をきちんと記録しておくこと」などといった非常に細かい指示を受けていた。また7月に行われた病院で検診では、ジョシュア君の再検査と注意深い観察が必要であることが告げられていた。そのためヴィクトリアは、ジョシュア君を連れて外出することも禁じられていた。
8月29日の朝8時40分頃、パールさんは機嫌よく過ごしていたジョシュア君とヴィクトリアに見送られていつものように仕事に出かけた。しかしその30分後、悲劇が起こった。
息をせず意識不明になったジョシュア君を抱えて外に助けを呼ぶために叫んだヴィクトリアの声を聞きつけた隣人が、999へ通報した。ジョシュア君は病院に緊急搬送されたが、医師が「治療の施しようがない」と言うほど頭部と脊髄に致命的な損傷を受けていたことが明らかになった。
その3日後、ジョシュア君はロンドンにあるグレート・オーモンド・ストリート病院で両親の腕に抱かれながら息を引き取った。
逮捕されたヴィクトリアは、当初「馬に乗るゲームをしていた」と供述していたが、裁判では判事が「それが死に至るほどの怪我を引き起こすはずがない」とヴィクトリアの供述を否定した。やがてハンガリー人の通訳を介してヴィクトリアはこのように話したという。
「20分ほどジョシュアとリビングで過ごした後、ベビーベットに寝かせて私はそばで縫いものをしていた。突然ジョシュアが激しく泣き出したので抱きかかえると顔が赤くはれているのがわかった。するといきなり泣き止んだので、喉を詰まらせたのかと思い、ジョシュアをうつ伏せにさせ背中を叩いた。息をしていないように感じて怖くなった。浴室へ行って嘔吐させようともした。何が起こったのか全くわからず、とても怖かった。」