イギリスには、慈善団体やシェルターと呼ばれるホームレスのための宿泊施設が数多く存在する。しかし難民や移民問題、就職困難といった状況もあり、その数は減少するどころか年々増加の一途を辿っている。そして路上で見かけるホームレスたちは、たいていがお金を恵んでもらおうと帽子や紙コップを前に置いてうずくまっている。そんな光景を目にすれば、心を痛める人も少なくはない。チャリティー活動に熱心なイギリス人は「困っている人を見たら助けたい」という精神が強く、ついホームレスにお金をあげてしまう。ところが市議会は、市民のそんな行為に注意喚起を促した。警察の調べでは物乞いをしている人たちの80%は家を持ち、そのほとんどがもらったお金をドラッグやアルコールに消費しているというのだ。
このほどランカシャー州プレストンの市議会が、「心優しい人たちはホームレスを助ける気持ちで接しているに違いないが、路上の彼らは自ら物乞いになる道を選んでいる。なかにはやり手の物乞いもいるために、親切な通行人からお金を巻き上げて結果的に裁判沙汰になり罰金支払いを命じられることもある」と英紙『Metro』に語った。
プレストンは街全体がフレンドリーであり、心優しい市民が多いという。そのため、そんな人たちの善意につけこむホームレスがあとを絶たないそうだ。「事実、彼らの中には生活保護を支給されて、家がある人もいますよ。でも仕事のない彼らは、ホームレスのフリをしているだけなんです。私たちは市民の親切を利用する路上の物乞いたちの習慣を断ち切らなければいけません」と市議会スタッフは話す。
お金をあげるよりも、それ以外の方法で彼らを救う手を差し伸べることが大切だという市議会側。これに対し、街行く人の声は「路上でお腹を空かしていそうな人を見たら、小銭があればあげる時があるよ。たまに騙されてるのかなと思ってしまうこともあるけど」「ほとんどのホームレスが犬を連れてるだろ? ちゃんと世話をしているように見えるし、そういう余裕があるのかなと不審に思うこともある」「会社側がチャリティー団体と提携していて、毎月私たちの給料から少額を引き落とすんだ。だから直接騙されているという感覚はないね」と様々だ。
また、路上で物乞いをしていた人物がその日の夜にパブで飲んでいたという光景を目撃した人もおり、実際に路上で座り込んでいる人たちが“ホームレス”なのか否かと言えば、やはり信ぴょう性は低いかも知れない。
ただ、多くのホームレスが犬を飼っていても「自分は食べなくてもお金があれば犬には餌をやることを優先している」という人は多い。きちんと世話がされているように見えるのは、彼らが犬を優先しているからだ。孤独に過ごす彼らにとって、犬はかけがえのないパートナーといえよう。
とはいえ、路上に座り込んでいるホームレスを通行人に見分けることはなかなか困難だ。市議会では「直接その人にお金を渡すよりも、ちゃんとした支援団体に寄付してもらう方がいい」と話している。
出典:http://metro.co.uk
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)